マーケティングを担うメディア「ZUU online」が金融業界に起こした変革

 「ZUU online」は、金融や経済の情報を扱う専門メディアだ。5万種類のコラムをとりそろえ、投資、マーケットから不動産、キャリアまで、投資家や資産運用を考える層に向けた情報を取り扱い、月間ユニークユーザー数は360万、1000万PVを集める。

 数年前に起こったフィンテックをつぶさに観察しながら、時代にあった投資をメディアという形で提案してきた同社では「金融商品の1つ」として、不動産情報を扱う。「投資先を決めるのではなく、何に投資をするのかを決める。投資する商品とユーザーの橋渡し的な役目をしている」と立ち位置を話す、ZUUの取締役 パートナーアライアンス本部兼FinTech推進支援担当である一村明博氏に、インターネットが起こした金融業界における変革と、それに追随し、変わりつつある不動産業界の現在について話を聞いた。

ZUUの取締役 パートナーアライアンス本部兼FinTech推進支援担当である一村明博氏
ZUUの取締役 パートナーアライアンス本部兼FinTech推進支援担当である一村明博氏

営業担当者の役割を「マーケティングからコンサルティングへ」と変える仕組み

――金融や経済の専門メディア、ZUU onlineを立ち上げた経緯を教えてください。

 金融はあまり良くない意味で参加者間での情報格差が大きい業界で、それは不動産業界ととても良く似ています。プロフェッショナルである金融機関に言われるがままに金融商品を購入する投資家が多く、その意味では、何をするにも人手を介しており、金融機関は大勢の人員を必要としていました。人が必要ということは、その分の人件費を賄うだけの収益を上げる必要性が金融機関側に生まれ、自ずと手数料は高くなるわけです。例えば、手数料が自由化された1997~1998年以前の証券業界では、100万円の株式を購入する際に1%、1万円程度の手数料がかかっていました。

 その後インターネット証券が登場し、手数料も自由化された結果、手数料率は10分の1、さらには100分の1程度にまで下がり、取引が活発化されマーケットが拡大していきました。取引が活発になることで流動性が生まれ、それまでとは異なる主体も取引に参加するようになったのです。

 これらの相乗効果で、マーケットは一旦は広がったように見えたのですが、その流れも長くは続かず、実際はそれまでも取引を行っていた既存の投資家がさらに活発に取引をするようになっただけでした。新規ユーザーが参加してきたわけではなかったんですね。金融機関は手数料の引き下げ競争に追われ、新たな投資家を育てたり、マーケットを拡大するまでには至らなかった、ということです。

 つまり、金融はまだ情報の非対称性がなくなっていない業界です。その非対称性をなくす、と決意して立ち上げたのがZUU onlineです。

――設立された2013年から現在まで、フィンテックを始め、金融業界が大きく変わった時期だと思いますが。

 そうですね。「ネットとリアルの融合」が金融業界で加速した時期でもあります。今まで営業担当者が担っていた仕事の一部がネットに置き換わりました。例えば証券会社の営業担当者は、お客様に会いに行き、資産状況を確認し、そこから最適な金融商品を紹介して顧客化していました。このプロセスには時間もかかりますし、何と言っても、資産状況を把握してそれに見合う金融商品とのマッチングが難しい。

 営業担当者が所属する証券会社には、最適な金融商品がないかもしれませんし、そもそも金融以外の投資商品に投資した方がいい場合もあります。このギャップを埋めるにはお客様自身が最適な投資商品を探せることが一番ですが、そもそも情報がなければ選べません。

 ZUU onlineは、こうした「資産を運用したいけれどどうしていいかわからない」人に向けて、金融、経済情報を提供するメディアです。具体的な商品をお伝えするのではなくて、この金融商品以前の資産運用に対する考え方や、購入した際の効果であったり、例えばiDeCoは税金対策に結びつきますといった知識を提供しています。

金融や経済の情報を扱う専門メディア「ZUU online」
金融や経済の情報を扱う専門メディア「ZUU online」

――商品説明の部分は各社の営業担当者の仕事で、ITが仕事を奪うという捉えられ方をされてしまうのではないでしょうか。

 従来から、金融業界のバックオフィスの部分はかなりシステム化が進んでいましたが、お客様に対するマーケティングはほとんどIT化ができていませんでした。この部分を変えると、業務効率化と生産性の向上に結びつきます。

 営業担当者の仕事は、どこに誰がいて、その人が何に興味を持っているのかを探るマーケティングと、さらにニーズを理解し、最適な金融商品を選び出すコンサルティングの2つの機能があります。今までの営業は、マーケティング部分に大きく力を割いていましたが、この部分をZUU onlineがメディアという形式で担うことで、営業担当者の方には、コンサルティングに集中していただけます。

 私たちでは「マーケティングからコンサルティングへ」というテーマを掲げていて、営業をマーケティングとコンサルティングに分離していきたいと思っています。営業担当者の方がコンサルティングに注力していただくことで、付加価値の高いサービスを提供することが可能になると確信しています。

 ひょっとすると、今まで金融業界で仕事をしてきた営業担当者の方の中には「仕事を奪われる」感覚を抱く方もいらっしゃると思います。そうではなくZUU onlineがやっているのは、コンサルティングの仕事に集中してもらうためのサポートなんです。

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