IoT用OS「Android Things」とスマートディスプレイに隠されたグーグルの狙い - (page 2)

Andrew Gebhart (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年05月18日 07時30分

 Googleは数年前からAndroid Thingsについて話してきたが、米国時間5月7日にAndroid Thingsを正式にリリースした。Android Thingsは同社の有名なAndroid OSを簡素化したバージョンだ。標準のAndroidと異なり、Android Thingsでは、スマートフォンを動かすために必要な全ての複雑な機能を処理することは想定されていない。

 その代わりに、Android Thingsはスマートホームデバイス、そして、スマートホーム関連のテクノロジを含む「モノのインターネット(IoT)」と呼ばれる広義のカテゴリ向けに作られている。Android Thingsの狙いは、電力をあまり使わないシンプルなタスク用のソフトウェアフレームワークを提供することだ。Androidの開発者向けウェブサイトで、スターターキットが販売されている。これには、基本的なプロセッサと構造部品が含まれているので、製品のアイデアがあれば、比較的少ない作業でプロトタイプを手軽に作ることができる。

 基本的なプロセッサを備えたスターターキットを提供することに加えて、Android Thingsは主に、デバイスをインターネットに接続できるようにするOSをうたっている。その機能には、「Googleアシスタント」へのアクセスも含まれる。Googleアシスタントは同社の音声制御式デジタルアシスタントで、最新のAndroidスマートフォンやGoogle Homeスマートスピーカの声として最もよく知られている。

 Ginda氏はGoogle I/Oの「Build real consumer devices with Android Things」(Android Thingsで真のコンシューマーデバイスを開発する)と題したセッションで、Android Things担当プロダクトリードのShikha Kapoor氏と共にプレゼンテーションを行った。Ginda氏がスマートディスプレイの開発過程について話した後、Kapoor氏は、開発者がその手順を踏んで独自の製品を作る方法を説明した。

 多少の技術的なノウハウがあれば、開発者はGoogleベースのスマートスピーカやスマートディスプレイを独自に作ることができる。だが、もちろん、それが目標ではない。Googleはそうしたデバイスの分野は既に網羅している。同社が期待しているのは、開発者がAndroid Thingsの素材を使って何か新しいものを作り出してくれることだ。

 Googleは新しいものを作り出す開発者をサポートし、Android Things向けに定期的なセキュリティアップデートも提供する。さらに後のプレゼンテーションでは、Googleアシスタント担当リードプロダクトマネージャーのChris Ramsdale氏が、際立ったサードパーティー製デバイスの大規模生産に関して、Googleが複数の大手メーカーと交渉していることを明かした。

 Googleがそれらの製品のセキュリティを維持したいと考えるのは明白だし、小規模なメーカーにとっても、セキュリティの負担を全て自社で背負わなくてもいいことは朗報である。さらに、Googleはこうした次期デバイス群を、ソフトウェア面である程度まとめて管理することもできる。

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提供:Andrew Gebhart/CNET

究極の概念実証

 今回のスマートディスプレイは、Android Thingsで作られるエンドデバイスが、必ずしも単純なじゃんけんロボットに限られないことを示している。Ginda氏は、単純な概念から、メーカー各社との話し合い、現在のほぼ完成した状態に至るまで、今回のスマートディスプレイがたどってきた全ての開発過程を説明してくれた。

 CESで実際に動いているスマートディスプレイを見たとき、筆者はそのタッチスクリーンにタブレットの機能が全て備わっているわけではないことを知ってがっかりした。Googleは、そのような判断を下した理由について、それらのデバイスを同社が「中距離ユーザー体験」と呼ぶものに最適化したため、と弁明した。例えば、ユーザーが調理方法をデバイスに尋ねた場合、キッチンカウンターの反対側にあるスクリーンの情報をキッチンから見たいと思うことがあるはずだ。

 Googleは、ユーザーがわざわざアプリをダウンロードしなくてもいいように、スマートディスプレイを箱から出してすぐに使える状態にしたいとも考えている。筆者はアプリをダウンロードして自分の体験をカスタマイズするのが好きなので、これはちょっと残念である。AmazonのEcho Showの限定的な機能についても、似たような不満があった。

 Googleがスマートディスプレイ市場に初めて参入するにあたって、機能を最大限に高めることは重要な点ではなかった。これらのスマートディスプレイは、Android Thingsを使って一から作られ、開発者にこのOSでどんなことができるのかを示している。

 Googleの新しいディスプレイ群は、それ自体は革命的なものでないかもしれない。7月にそれらのデバイスが発売されたら、消費者はその真価を判断できるだろう。Googleにとってもっと重要なことは、これらのデバイスが、同社の目標を達成するための巧妙な手段であるということだ。Googleは、開発者コミュニティーが、これらのスマートディスプレイを支えているAndroid Thingsの素材を使って、さらによいものを作ってくれることを期待しているのである。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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