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「いい授業とは何か」は生徒のデータが教えてくれる--高校2000校が導入する「スタディサプリ」 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 井口裕右2018年05月10日 08時00分
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コーチとの信頼関係を、学習のモチベーションにつなげる

――スタディサプリの「合格特訓コース」、スタディサプリEnglishの「パーソナルコーチプラン」ともに、視聴型のオンライン教育から一歩踏み込んだサービスを提供していますが、どのような特長があるのでしょうか。

西山氏:スタディサプリの合格特訓コースは、生徒の志望校に応じて専用の学習プランを提示して、その学習計画をしっかりとやりきるところを担当コーチが伴走するという点が大きな特長です。コミュニケーションはチャットで行われ、生徒からわからない問題をコーチに画像送信することもできます。

 コーチについては、難関大学に一般受験で合格した現役の大学生から面接なども行って選抜しています。オープンな募集はしておらず基本的には現在活動しているコーチからの紹介という形で応募を受け付けていますが、それでも希望者は殺到している状況です。2017年は合格特訓コースのコーチとして900名程度を面接しました。その後、コーチに採用された方に勉強会に参加していただくことで、コーチングの質を担保しています。2017年3月に開始して、2018年初めて合格実績が出てきましたが、効果は順調に出ているようです。


「スタディサプリEnglish」

笹部氏:スタディサプリEnglishのパーソナルコーチプランは、スタディサプリの「合格特訓コース」から派生する形で誕生したのですが、最初はGoogleハングアウトや教材コンテンツを活用し、数十名のモニターを集めて実験的に開始しました。ターゲット層は、個人利用の場合は30代から40代の社会人が中心です。

 そこでは、音声通話によって英語学習の課題などをカウンセリングしてどのように学習すればいいのかをプランニングし、その後は毎日どのような学習をどれくらい行ったのかをコーチに報告するようにしました。某スポーツジムと同じような仕組みですが、結果的にこれで高い学習効果が得られたのです。なお、現在ではコーチと受講者のコミュニケーションは、音声通話やチャットなどの機能を内蔵した専用のアプリを使って行っています。

西山氏:最近、短期間で高い効果をあげる“特訓系”と呼ばれるスクールカテゴリが盛り上がっていますが、こうしたスクールは成果を確実に生み出す代わりに2カ月で30万円から40万円程度のコストが掛かります。しかし、この実験ではこうしたスクールの実績とほぼ同等の効果を生み出すことができました。

 それを受けてスタディサプリEnglishのパーソナルコーチプランは正式にサービスインしたのですが、直後から定員を上回る申込をいただき、受付を締め切っている状態です。他のスクールで数十万掛かるパーソナルコーチングを3カ月のプログラムで6万8000円という価格で実現できているので、そこが好評の理由だと思います。ちなみにコーチは、英会話スクールの非常勤講師や、キャビンアテンダントや外資系企業の出身で現在は主婦をしている方などが担当しています。

 私も実際にこのパーソナルコーチプランをモニターの一人として受けたのですが、コーチとの信頼関係が構築できると、日々の勉強をサボることができなくなる。勉強しないこと=コーチを裏切ることへの罪悪感が生まれるのです。コーチから期待を掛けられているからこそ、その期待に応えたいという思いが芽生えて、学習継続につながっているのではないかと感じています。

笹部氏:スタディサプリEnglishは、法人利用に関する相談も増えてきています。企業の研修などにEラーニングが導入されるケースは多いですが、受講する社員の意欲低下などによって学習の継続性に課題があります。本当は一人ひとりに寄り添って研修をサポートしたいけれど、そのような余裕は企業にはありません。そこをスタディサプリEnglishにアウトソースしたいという相談は多く、現在そのようなニーズを受け入れられるよう急ピッチで準備を進めているところです。

――スタディサプリの合格特訓コースにおける、生徒とコーチのコミュニケーションはどれくらいの頻度で行われているのでしょうか。


コーチと生徒はチャットでコミュニケーションする

西山氏:ケースバイケースですが、基本的には24時間以内に返信するようにしています。生徒によってはレスが多いほうがいい場合もあれば、レスが多いと嫌がる生徒もいます。生徒に応じて一番学習のモチベーションが高まるコミュニケーションの形を探りながら進めていますね。大学受験は1年以上の時間を掛けて準備をしますので、たとえばセンター試験の直後など生徒の不安が高まる時期などは意図的にコミュニケーションの回数を増やす場合もあり、受験期間のフェーズによって変わっていきます。生徒とコーチの間では特に情熱のこもった会話が交わされるときもあり、強い信頼関係が生まれていることを実感しますね。

――個人指導塾などでも、個性的な先生と生徒のエンゲージメントの中から成果が生まれるケースもありますね。同じような現象がスタディサプリでも生まれているのかもしれません。

西山氏:それがスタディサプリの強みなのではないかと思います。技術一辺倒のサービスではなく、技術でできることと人が介在することの良さを上手く組み合わることができているのが、スタディサプリの“らしさ”を生み出していると感じています。

“いい授業とは何か”、答えはすべて生徒のデータが教えてくれる

――最近、教育における「ティーチング」はデジタルに置き換わりつつあり、これからの人の役割は「コーチング」だと言われています。

西山氏:そうですね。データの取扱いは機械=デジタルが得意な領域で、人が得意な領域は動機づけなのではないかと思うのです。機械には、人の気持ちを動かすのがなかなか難しい。人と人がコミュニケーションをすることで、気持ちが動いてモチベーションになるのです。これは将来に渡って人が担うべきところだと思います。一方、学校でも先生がどのように生徒の学習に介在するのかが重要なテーマとなっていて、私たちも積極的にコーチングの重要性をお伝えしているところです。

笹部氏:ただ、もしかしたらこのコーチングでさえ、将来的にはデータ分析によって機械化できるのかもしれません。たとえば、過去のコミュニケーションを分析すれば、「どういう場合にどういう言葉を掛けるとモチベーションが上がっているか」というパターンを作れる可能性も否定できません。コーチングに関する会話の履歴は過去のものをすべてデータとして保有して、良いコミュニケーションの事例はコーチ間で共有してノウハウを蓄積しています。こうしたデータを活用すれば、コーチングの質はさらに高まるのではないでしょうか。

――オンラインだからこそ、さまざまなデータを活用して教育やコーチングの質を高められるということですね。

西山氏:たとえば、授業の動画などでは「いい授業って、何だ?」というテーマがあります。動画は、視聴開始時からゆるやかに視聴者が離脱して視聴者数は右肩下がりになっていきますが、その中で急激に離脱が増えているシーンなどがあるわけです。このシーンを探ってみると、生徒に考えさせる時間で無言が長く続いてしまったり、先生がフレームアウトしてしまっている時間があったりするのです。動画コンテンツは公開後も編集ができるため、こうした離脱の多い位置を修正すれば、より多くの生徒が動画を見続けてくれるわけです。また、生徒は授業を評価できるので、評価の低い授業は撮影し直したり、先生に交代していただく場合もあります。


視聴者が離脱するシーンをデータから特定して対応しているという

 生徒の反応をデータから読み取って改善していくというのは、ITならではの教育の在り方ではないかと思います。「いい授業って、何だ?」という問いに対する答えは、すべてデータから判断しているのです。

笹部氏:データの活用は英語でも有効ですね。たとえば、ある受講者のリスニングテストの回答ログを分析すると、実は英国人が話す音声の聴き取りだけ不正解だったといった傾向が読み取れる場合があります。そこで、英国人によるリスニングを集中的に行えば、スコアが大きく改善するのです。このようなデータでしか気づけないようなモチベーションアップのヒントは、多く見つかっています。

――コンテンツ制作の体制は、現在どのようになっているのでしょうか。また、そこにもデータは活用されているのでしょうか。

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