村田製作所の「NB-IoT」戦略--小型・高信頼の通信モジュールでIoT市場に挑む - (page 2)

小型モジュールの負荷試験を複数ロットで実施

 数年前から現在まで、それらモバイル機器向けの通信モジュールは同社の主力製品の一角を担ってきた。しかしながら、「LPWAはスマートフォンの通信技術とは使われ方が異なる。Wi-Fi、Bluetoothは言ってみれば屋内、近距離というキーワードにまとまるが、LPWAは屋外、ロングレンジが特徴」と兵庫氏が話す通り、スマートフォンとLPWAは明らかにターゲットの異なるビジネスだ。将来のIoT市場の成長を見越し、2014年ごろからLPWAに本格的に取り組み始めた同社だが、それには「長年お付き合いのあるファーウェイから、一緒にやらないかという誘いがあった」ことも背景にあるようだ。

 ただ、モバイル機器の通信モジュールで同社が過半数のシェアを占めているとはいえ、この分野はグローバル企業のレベルで競合が多い。なかには、すでにNB-IoT対応の通信モジュールを出荷しているところもある。それに対して、村田製作所のNB-IoTモジュールはどういったところにアドバンテージがあるのだろうか。兵庫氏は「一番の強みは小型化できること」だと語る。

 現在開発が進められているNB-IoTモジュールは、15.5mm×14mm×2.05mmで、指先に乗るサイズ。小型化しつつも、「品質面にもこだわって設計している。開発段階で長時間の信頼性試験を行っており、常温だけでなく、低温・高温など温度変化する環境下での負荷試験を、複数ロットで実施している」(兵庫氏)といい、その耐久性は「民生機器向け、産業機器向け、車載機器向けなど幅広い製品群の開発で培った品質がある」と胸を張る。屋外使用も想定されるIoT機器において耐久性の高さは利点となるが、それでいて「市場競争力ある価格も実現している」のが特徴だという。


小型なだけでなく高い耐久性も誇ると兵庫氏

 性能や価格だけではない。「IoT市場においては、いかに使いやすいものを作るか」も重要になると兵庫氏は話す。「PCに接続すれば即使える1個何百円のWi-Fiアダプタと、IoTデバイスは違う。IoTはそこまで単純なものではない。だからこそ、企業が使い始めるまでのハードルを下げ、トラブルを起こさず、簡単に使ってもらえるようにすることが大事」とし、その技術やノウハウを保有していることも強みだと話す。

 また、「品質、サイズは重視せず、とにかくすぐに使えるものが欲しい、というお客様もいる。そういう場合は、電波法に関する認証からアンテナデザインまで、全部仕上げて、あとはシンプルなコマンドを投げるだけで使えるモジュールを提供することもできる」といったフレキシブルさも同社の得意とするところだという。

村田製作所がLPWA規格の勢力図を変えるか

 「使いやすいモジュール」によって、企業のIoT機器開発のリードタイムを短縮できる可能性はあるが、兵庫氏は「NB-IoTの市場が立ち上がってくるのは、おそらくもう1〜2年先になる」と見る。中国、欧州で先行して導入が進むNB-IoTではあるものの、「新しい技術であり、準備が整っていない部分がたくさんある。たとえば、試験用の測定機器は新しくなるし、日本はキャリアの動きとしても本格化はまだこれから。技術的なハードルが高いわけではないが、自社だけで完結するものでもない」からだ。

 それでも、NB-IoTを主導するファーウェイとの連携強化により、「接続試験などでは、基地局ベンダーでもあるファーウェイから協力を得られるのは大きい」。世界各国の通信事業者やデバイスメーカーなど、ファーウェイのパートナーとのつながりをもてることから、営業面でのメリットも少なくない。「ファーウェイは世界各国で顔が広い。他のICベンダーとの協業よりも、広い範囲で関係性を築けている」と笑顔を見せる。

 NB-IoTモジュールについては、「当面の注力地域は中国、欧州、日本になる」としつつ、「日本企業として、できるだけ日本市場は重視していきたい」と語る。同社がすでに提供しているLoRaWANやSigfoxの通信モジュールも、「お客様が要望、用途に合うものを選べるようにする」ために並行して製造を続ける。日本ではCat.M1がややリードしている印象だが、同社の動きによっては、LPWAの勢力図が今後大きく変わっていく可能性もありそうだ。

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