村田製作所の「NB-IoT」戦略--小型・高信頼の通信モジュールでIoT市場に挑む

 高速、低遅延通信の5Gとともに、低速、省電力、広カバレッジのIoT向け無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」の実証実験が進んでいる。現在のところ、日本国内で採用が進む主なLPWAには、NB-IoT、Cat.M1、LoRaWAN、Sigfoxの4種類があるが、なかでも既存のLTE技術を応用したセルラーLPWAであるNB-IoTとCat.M1は、大手通信キャリアによる本格稼働に向けた動きが活発化していることもあり、注目度が俄然高まってきている。

 これら4つの規格の得意・不得意分野はそれぞれ異なるが、いずれにしても普及拡大の鍵は、いかに多くのデバイスに採用されるかにかかっていると言える。そんななか、電子材料・部品などの開発・製造大手である村田製作所が、中国の巨大企業ファーウェイと協業し、NB-IoTの通信モジュール開発に取り組み始めた。


村田製作所 モジュール事業本部 IoTモジュール商品部の兵庫弘考氏

 一般の消費者にとっては、今ひとつピンと来ないかもしれない村田製作所とIoT、そしてファーウェイとの関係。協業によるNB-IoTへの取り組みにはどういった意味や狙い、背景があるのか。同社でIoT関連のビジネス戦略を担当する兵庫弘考氏に話を聞いた。

NB-IoT通信モジュールは2018年内に完成へ

 NB-IoTをはじめとするLPWAは、数十〜数百Kbpsという低速通信ながら、極めて低い消費電力で小容量バッテリでも長期間動作し、既存のLTE基地局を流用できることから、広いカバレッジを実現しやすいのが特徴だ。従来の3G/4G通信にはないこれらの特性を活かし、各家庭の水道、ガスのようなライフラインの自動検針、広大な農場における土壌監視、あるいは工場設備の監視や予防安全などでの需要が見込まれている。

 NB-IoT(とCat.M1)が標準化団体3GPPによって規格として策定され、標準化したのは2016年のこと。それより以前にLoRaWANやSigfoxといった規格が先行しており、NB-IoTは後発ということになる。中国企業のファーウェイ、正確にはファーウェイの子会社であるHiSiliconがNB-IoT用のチップを開発し、ファーウェイがもつLTE基地局のノウハウも活用して、中国や欧州を中心に普及を進めている。日本ではNB-IoTとともに、Cat.M1も並行して実証実験が行われている段階だ。

 そうした状況下で、村田製作所はファーウェイと協業し、HiSilicon製のNB-IoT通信チップを採用したモジュールを2018年内に完成させるとしている。3月時点でハードウェア設計はほぼ完了し、ソフトウェアのチューニングを進めている段階。5月9日に東京ビッグサイトで開幕する「第7回 IoT/M2M展 春」でモジュールの実物を展示する予定で、早ければ2019年中ごろには採用製品が登場する見込みだ。


村田製作所が開発中のNB-IoTチップ

 村田製作所のNB-IoTモジュール開発、もっというとファーウェイとの協業は唐突に感じるところもあるかもしれない。しかし、実は村田製作所は、以前からモジュールや電子部品をファーウェイに納入してきた実績がある。今回のNB-IoTモジュールの開発は、ファーウェイからチップを購入しモジュールを作るという、従来とはある意味逆の流れになり、2社の関係性が一段階発展したとも言えるだろう。

 一般にはあまり知られていないことだが、村田製作所が手がけるWi-FiやBluetoothなどの通信モジュールは、全世界のモバイル機器において54%ものシェアを誇る。しかも海外拠点は52カ所、海外売上比率は9割を超えている。「弊社のビジネスの基本的な立ち位置として、裏方に徹するというものがある」と兵庫氏が語るように、同社の部品がスマートフォンを含む世界中のモバイル機器の多くに採用されていることは、知られざる事実となっている。

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