世界190カ国、1億1700万のユーザーに、動画配信サービスを提供しているNetflix。オリジナルコンテンツの提供に定評があるが、4K HDRコンテンツを他社に先駆けて配信するなど、技術面での取り組みもスピード、対応力ともに、群を抜いている。
映像配信サービスが急増する中、コンテンツとテクノロジの両面から、「視聴者に新しい体験を届ける」ことを実践しているNetflixで、約2000人いるエンジニアを率いるNetflixプロダクト最高責任者であるグレッグ・ピーターズ氏に話しを聞いた。
――Netflixテクノロジ部門の現在の体制について教えてください。
米カリフォルニア州ロスガトスにある本社にテクノロジ部門の拠点を構えています。現在約2000人のエンジニアが働いており、これはNetflix従業員の約半数にあたります。
本社のほか、各国ごとにエンジニアを配置しており、そちらでは各地域の企業との交渉や提携をお願いしています。日本であれば、テレビやスマートフォンメーカーといった、視聴デバイスの会社や、通信会社の方々と提携したり、その国に合った決済の方式を作ったりすることがローカルでの役割になります。
――約半数の方がエンジニアというとかなり多いように感じます。
実は、少し前までは半数以上がエンジニアでした。安定した配信システムを提供する一方、Netflixではコンテンツ制作会社としての顔もあり、近年では存在感を高めています。コンテンツ部門の人員が増えることで、現在のバランスになっており、とてもいい状態だと思います。
――Netflixでは、4K HDR配信など、新たな取り組みに積極的です。配信において重視しているポイントは。
ユーザーに安定してコンテンツを配信することが基本です。ただ、配信環境はデバイスによって異なりますし、国ごとにネットワークの事情も違います。その中でも最高の体験を実現することに重きをおいています。
モバイル端末向けであれば低ビットレートが求められますし、一方で4K HDR、ドルビーアトモス対応といった最高品質のものも提供しています。低ビットレートから高ビットレートまで、すべての環境で安定した接続を目指しています。
――具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
大きく分けて2つあります。1つは「オープンコネクト」、もう1つが「ダイナミックオプティマイザーエンコーディング」です。
オープンコネクトは、各地域のインターネットサービスプロバイダ(ISP)と協力して、各ISPのサーバにコンテンツを置くことで、エンドユーザーにコンテンツを届けるまで距離を短くし、安定した配信を行う方法です。すべてのコンテンツをISPのサーバに入れることはできないので、人気コンテンツを見定めて、入れ替えるようにしています。
前日の夜に、明日人気が出そうなコンテンツを予測して、真夜中の最もトラフィックが低い時間帯にコンテンツを入れ替えています。コンテンツは毎日入れ替えることで、最も安定した配信を提供できます。一番人気のあるコンテンツをよりユーザーの近くに置くことで、安定し配信を実現できる、それがオープンコネクトです。
ダイナミックオプティマイザーエンコーディングは、低ビットレートでも高品質を提供できるエンコーディング技術になります。実際、低速通信と言われる150kbpsでも、高品質のものを提供できています。
以前は、映画やドラマなど作品単位でエンコーディングをしていましたが、フレーム単位でエンコーディングすることで、低ビットレート時における画質を確保しています。私自身も画質を見て驚きましたが、現在ではさらに低いビットレートでも高画質再生ができる技術開発を進めています。
一方、4K HDR、ドルビーアトモスといった高ビットレートによる高画質、高音質の方向性もあります。こちらは、テレビやオーディオメーカーの方と協力することで、明るさ、コントラスト、音作りをともに追求していきます。映像や音声の新技術は続々登場してきますが、それをきちんと追っていることは非常に大切です。
最新の情報はNeflix内だけではなく、コンテンツを制作する監督、撮影監督といったクリエーターにも共有することで、最新のフォーマットにいち早く対応したコンテンツを生み出す環境を整えています。
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