不動産仲介のハウスコムはこのほど、ペットの仮想人格と会話を楽しむことができるスマートフォンアプリ「AI PET(アイペット)」をバージョンアップした。
2017年4月にリリースされたAI PETは、自身が飼っているペットの名前や性格、特長などを簡単な質問に応えて入力していくことで性格づけを行い、アプリに話しかけるとペットのAIが応答してくれることが大きな特徴。ペットの飼育が難しい賃貸物件や単身者にコミュニケーションを楽しめる環境を提供することを通じて、通常は契約時や更新時にしか接点のない不動産仲介と入居者の間に、新たなタッチポイントを形成していくのが狙いだ。
この度の機能拡充では、ペットが行う会話の精度やペットらしさを高めたほか、ペット側から飼い主であるユーザーに生活圏の天気予報を話しかけてくれたり、地域に関連したイベント情報やニュースなどを届けてくれたりするという。そこには、どのような狙いや開発の工夫があるのだろうか。
ハウスコム サービス・イノベーション室の室長である安達文昭氏と、AI PETの開発に関わったレッジのCMOである中村健太氏、そして人工知能の開発を手掛けたデータセクションの取締役CTOである池上俊介氏とビジネス企画統括部/ビジネス企画部/パブリックリレーションズ部の部長である伊與田孝志氏に話を伺った。
――まずは、今回の機能拡充の背景や狙いについて教えてください。
中村氏:「Google Home」や「Amazon Echo」といったスマートスピーカは、ユーザー側から話しかけない限り機械が話しかけてくるということはありません。アラームも、ユーザーがお願いして初めて機能します。もっと広くみると、ウェブサイトも基本的にはユーザーが目的を持って能動的に探さなければ情報は受け取れません。今回、AI PETが目指すチャットボットは、こうした利用シーンの“逆”を行こうと考えました。
つまり、ペット側がユーザーに思いもよらない気づきを与えてくれるような情報をいわば“勝手に”探して提供してくれるというコンセプトです。当然、ペットを動かすAIに入っている情報は予め人の手で学習させた限られたものですので、提供できる情報に限界はあります。そこで、外部のデータベースと連携させることでAIが学習する情報を増やし、一方でユーザーの居住地域、最寄り駅、職場の地域などからユーザーの“生活圏”を判別し、そこに最適な情報を“ペットがユーザーに届ける”という形で表現することに挑戦しました。
――“ペットが届ける”というところに新しさを生み出そうとしているのですね。
中村氏:スマートスピーカのように、必要な情報を無機質に届けるだけでは、コミュニケーションAIとしてあまりにも無愛想ではないかと考え、“ペットらしく届ける”というところにはこだわりました。今回の開発では、AIが能動的に情報を発信できる仕組みを作り上げる点と、そこから生まれるユーザーの質問やフィードバックにAIがどう応えるかという点を同時並行で進めていき、ユーザーとAIで自然な会話が生まれるようにしました。
常、企業がチャットボットを開発する際には、“こう言われたら、こう返す”というパターンを完全に制御します。しかし、AI PETではあえて考える自由度を高めて、考えながら答えを返すという精度ではかなりの高さを実現できたのではないでしょうか。
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