不動産仲介業者ハウスコムが4月に提供を開始したアプリは、ペットの仮想人格と会話ができる「AI PET(アイペット)」(iOS、Android)だ。不動産サービスとペットの接点はどこにあるのか。また、ペットと会話するためにどんなテクノロジを使用しているのか。ハウスコムがAI PETを手掛けたその背景と、今後の展開について、ハウスコム代表取締役社長の田村穂氏、ビットエーCMOの中村健太氏、データセクションのビジネス企画統括部長ビジネス企画部長販売促進部長の伊與田孝志氏に話を聞いた。
ハウスコムがAI PETの開発を開始したのは、2016年の7月。そもそものきっかけは、部屋探しで一度来店したユーザーとの接点を継続する仕掛けが欲しかったからだという。
ユーザーとの接点が引っ越しで途切れてしまうことは、ハウスコムが長年抱えてきた課題の1つ。できれば次の引っ越しでもハウスコムを利用してほしいとの思いから、使い続けてもらえるためのアプリとして開発した。
ハウスコムでは、AIがおすすめ物件をレコメンドする「AI検索」や顧客の問合せにAIが自動的に応対する「AIチャット」を採用しており、テクノロジの導入には積極的。社内には「オープンサービスイノベーションラボ」という新サービスの開発を推進する部門を設け、そこでは社外のシステム会社やスタートアップも参加する形で、新サービスを構築している。
AI PETの制作も、コンテンツ、ソフトウェアの企画、作成などを手掛けるビットエーと、オンラインデータ収集、分析などを担うデータセクションの2社が共同で開発。ハウスコムは企画、監修を務める。
AI PETは、自身が飼っているペットの名前や性格、特長などを簡単な質問に応えて入力していくことで、性格づけをし、あたかもペットとチャットしてしゃべっているような感覚が味わえる無料のアプリ。現在登録できるのは猫と犬のみ。アイコンにはペットの顔写真を設定できる。
「特に難しかったのは、自然な会話にすること。AIチャットなどは質問をしたら、それに対する回答ができればいいが、今回目指したのはペットとの会話を楽しむこと。例えば『おはよう』と声をかけたら『おはよう』とあいさつで返してほしい。そうした気持ちの良いの受け答えができるように試行錯誤を重ねた」と話すのは、データセクションビジネス企画統括部長ビジネス企画部長 販売推進部長の伊與田孝志氏。人の会話同様に、柔らかい受け答えを目指したという。
AI PETには、3種類のエンジンを採用。1つは「おはよう」などの定型の問いかけに対して、定型で返してくれるエンジン。それに自由に会話する2つのエンジンを組み合わせた。そのうちの1つは、中部経済新聞が採用した文章自動生成AI「AI記者」にも採用されている、設定したキーワードを使って文章を組み立てるもの。もう1つがディープラーニングになる。
「最初はディープラーニングだけを使っていたが、求めている文脈に対して、返答があっているのかいないのかわからないことがあった。そこで人間の言っていることに対して、フィットするように、意図的に寄せていかないと気持ちの良い会話にならないということがわかり、2つのエンジンを加えた」と伊與田氏は説明する。
「そもそもペットは話さないので、この返答で正解かと聞かれても主観的なジャッジになってしまう。質問に対する正解を答えるAIと違いそこが難しい。そのあたりはデータを蓄積しながら高めていきたい」とビットエーCMOの中村健太氏は現状を分析する。
現在のAI PETは「ねずみのおもちゃ」や「まぐろのおやつ」などの名詞を理解することが難しく、それよりも「つかれた」「ありがとう」など、ユーザーの気持ちを伝え、それに対して「おつかれさま」「がんばれ」などの返答をすることが得意。「ふわっとした会話でうまくかみ合うことを目指す」(伊與田氏)という。ただし、今後は言葉を覚えていくこともできるようになるので、「前に言ってた○○だよね」などの答えが返ってくる可能性もあるという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」