AIのペットと“雑談”できるハウスコムの「AI PET」、自然な会話に挑んだ開発の裏側 - (page 4)

――AI PETの今後の改善ポイントや、今後の技術開発の構想があれば教えてください。

中村氏:細かいチューニングは今後も続けていきますが、今後AI PETのユーザー数が爆発的に増加していくということは、あまり想定していません。また、安達氏が話す通りこのサービスからビジネスを生み出すという意図もありません。であれば、AI PETで成熟したテクノロジを本業の顧客コミュニケーションの充実などに横展開していくほうが重要ではないかと考えています。

 例えば、無愛想な問合せチャットボットに人格をつけてあげたり、店舗の営業担当者が対応する前にまるで営業担当者のような自然なコミュニケーションができるチャットボットが接客をしたりなどが考えられますが、世の中にある一般的なウェブ接客サービスとは一線を画すような顧客体験を作ることができるのではないかと思います。

池上氏:AIの部分に関しては、“会話が続けられる”というのはAI PETの大きな価値だと思います。機能改善したところで新たなログが蓄積されていますので、そこから得られた知見や現実の情報を会話のなかに盛り込んだ際にどのような価値が生まれるかなどについては、引き続き研究していきたいと思います。そして、そうした知見を本業のビジネスにも応用できればと思います。

データセクションのビジネス企画統括部/ビジネス企画部/パブリックリレーションズ部 部長である伊與田孝志氏
データセクションのビジネス企画統括部/ビジネス企画部/パブリックリレーションズ部部長である伊與田孝志氏

伊與田氏:今回の機能改善で、“自分の街のことを好きになってもらう”というAI PETの役割や方向性が見えたのではないかと思います。その上で、どういう情報を届ければもっと自分の街のことを好きになるかというところは、今後のチューニングのテーマになるのではないでしょうか。ただ会話を楽しめるというだけではアプリを使い続ける動機にはなりにくく、ユーザーにとって“もっと自分の街のことを好きになる”というプラスアルファの喜びが必要ではないかと思います。これまでの開発では“会話を成立させるにはどうすべきか”というゴール設定でしたが、今後は“会話を続けながら目的を達成するにはどうすべきか”という新たな段階に入ったと言えるのではないでしょうか。

中村氏:AI PETは開発開始から2年が経ちますが、実は事業会社がチャットボットの開発に2年も予算をつけて、ここまで本気で取り組んでくれるというケースは他にほとんど例がありません。大体のケースは短期間でコンテンツを使い終わったら、開発・運用も終わってしまうのです。そして、自然な対話を実現しているチャットボットもまだ少ない。これが、チャットボットは無数に誕生している中で、ユーザーになかなか定着しない背景です。しかし、こういう課題がある中で、私たちは2年かけてAI PETをここまで成長させることができました。ここで培われた技術がこれからどのような体験を生み出すか、これからの展開に期待していただければと思います。

安達氏:正直、開発を始めた当初は2年でここまでできるとは誰も予想していませんでした。それでも、代表の田村は「とりあえず、若い人たちに任せてやらせてみろ」と背中を押してくれたわけです。当初は課題もありましたが、開発を続ける中で自然な会話が成立するレベルまで進化して、事業への技術転用が見通せるところまでやってきました。この2年で培ったテクノロジを活かして本業の領域で顧客とのコミュニケーションを豊かにするための新たな試みに取り組めればと思います。私たちは、このAIへの挑戦を絶対にやめません。挑戦を続ける中で、顧客満足にも来店率や成約率などのKPIにも貢献できる“最強の接客チャットボット”を作れたらいいですね。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]