悪意のある大人に騙されて、子どもが自らの裸や下着姿をスマートフォンで撮影・送信してしまう“自画撮り”の被害が拡大している。警察庁がまとめた統計によると、2016年に自画撮りの被害にあった子どもの数は480人で、2012年から毎年増加。前年比では100人以上増加しているという。2017年2月には、東京都が未成年者に自画撮りの送信を要求した人に罰則を設ける「青少年の健全な育成に関する条例」の改正を全国に先駆けて施行するなど、行政も本格的に対策に乗り出した。
子どもたちをこうした被害から守るために、通信会社はどのような取り組みをしているのだろうか。NTTドコモ CSR部の第三CSR担当主査である菅野幸子氏と、プラットフォームビジネス推進部のセキュリティサービス第1推進担当である合田有紀子氏に話を聞いた。なお、同社は朝日新聞と共同で自画撮り被害の実態を啓発するための動画を2月に公開。これまでに150万回以上の再生回数を記録している。
――まずは、2月に自画撮り被害の啓発動画を制作した背景について教えてください。
菅野氏 : 今回、この動画はドコモのCSRに関する取り組み「For ONEs」の一環として企画しました。これまでFor ONEsでは、耳が聞こえづらい方のための通話サポートアプリ「みえる電話」や、特殊加工した3D写真で目の見える人と見えない人がいっしょに写真に触れて楽しむ体験を提供する「3Dセルフィー・プロジェクト」などを紹介してきましたが、これからの時期は新しくスマートフォンを持つ若い人が増えますので、世の中の自画撮り被害の実態を鑑みて啓発動画を制作しようということになりました。
この動画によって、初めてスマートフォンに触れる子どもたちやその保護者といった、当事者に知っていただきたいということはもちろんですが、大事なのは世の中に広くこの社会課題を知ってもらうことだと考えています。動画ではドコモとしての取り組みも紹介していますが、何よりもまずは、この動画を通じて子どもの自画撮り被害が社会全体で解決しなければならない問題であることに気づいてもらえればと考えています。
――動画の内容を拝見したとき、メッセージのやり取りを通じて女子高生が悪意のある大人に迫られていく様子が非常に生々しいと感じました。企業の啓発動画としてはかなり踏み込んだ内容に見えますが、どのような狙いがあるのでしょうか。
菅野氏 : 実態を知っていただかなければ、これがどれほど深刻な社会課題なのかということが伝わらないと思い、あえて踏み込んだ表現にしました。今回コラボレーションした朝日新聞社は、この子どもの自画撮り被害について積極的な取材活動を行っていて、動画では実際に発生した被害の状況をもとにシナリオを作成しました。リアルな視点で伝えていくことが大切なのではないかと考えています。
――公開後の反響はいかがでしょうか。
菅野氏 : SNSなどで多数の拡散が見られ、「もっと子どもたちに知ってほしい」「今の子どもはこういうトラブルに遭っているのか」といった意見が大人から寄せられているのが印象的ですね。この動画は子どもたちだけ、保護者だけに向けて作られたものではなく、自画撮りトラブルを社会課題として捉えてほしいという考えで作られましたので、幅広い年代に受け入れてもらっていると考えています。
そして、この動画は“子どものスマートフォン利用”というテーマに関心のない人々に気づきを与えたいという狙いがありました。新聞記事などニュースなどを読むだけでは「本当にこんなことをする人が多いのか」と半信半疑だった人たちに、動画を通じて友だちのような会話からエスカレートして自撮り被害が生まれてしまう様子を視聴してもらうことで、被害の実態を追体験してもらい自分事化してもらっているのではないかと思います。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」