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「正解を言いあてる」だけの教育に変革を--DeNA南場会長が語るプログラミング教育

藤井涼 (編集部) 渡徳博(カメラマン)2018年01月01日 08時00分
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 スマートフォン向けゲームや球団運営で知られるディー・エヌ・エー(DeNA)は、CSR活動の一環で教育に力を入れている企業でもある。10月には独自開発した小学校低学年向けプログラミング学習アプリ「プログラミングゼミ」を無償で公開し、渋谷区内の小学校のタブレット約7000台に導入することを発表した。なぜ、インターネットサービスを主力事業とする同社が教育に取り組むのか。DeNA代表取締役会長の南場智子氏にその理由を聞くとともに、同氏が理想とする教育のあり方を聞いた。


DeNA代表取締役会長の南場智子氏

「正解を言いあてる」だけの教育には問題がある

——IT企業であるDeNAが教育に取り組む理由を教えてください。また、小学生のうちからプログラミングを学ぶ意義について、どう考えていますか。

 私は日本の教育には大きな問題があると思っています。間違えずに正解を言いあてることに価値を置いた、戦後に作られた教育システムがいまだに続いていて、社会で要求される能力が全く変わってきているのにも関わらず、それに呼応して変化していないことに非常に強い問題意識を持っています。そこで、DeNAとしてできることから取り組んでいるのです。

 目指していることが大きく2つあります。1つは、答えを記憶して言いあてるという従来の教育ではなく、問題を一緒に解決する、新しいものを創造する、チームでより高い目標に挑戦するといった教育に変えていくこと。もう1つは、デジタルネイティブな子どもたちが、コンピュータに使われたり競ったりするのではなく、コンピュータを自らの道具として使える世代に育てていくことです。

 小学生はデジタルデバイスを当たり前のように使いこなす世代ですが、下手をすると与えられたものばかりを使う受け身の考え方になってしまうんですね。なので、誰かが作ったデバイスやアプリを使うだけでなく、もともとそれは人が作ったものだということを伝えて、もしかしたら自分はもっと面白いものを作れるかもしれないということを分かってもらう必要があると思います。そのためには、子どもたちの発想が柔軟で吸収も早い初等教育から始めるのが一番です。やはり、大人になると段々余計なことを考えてしまいますし、答えを探す癖がついてしまうので、その後にプログラミングをやっても勿体ないと思います。

 私たちはIT企業ですので、プログラミングを教えられる人間は山ほどいます。従業員の平均年齢は30代前半なのですが、経営幹部の中にもちょうど自分の子どもが小学生という人が増えています。そうすると現行の教育制度について問題意識を持ちますし、「日本はこんなにもIT教育をやらないで大丈夫かな」と思ってしまっています。アメリカやイギリス、イスラエル、シンガポールなどと比べると日本はかなり遅れていますので。

 そういった、せめて自分の信じる教育を自分の子どもには与えたいという(従業員の)親としての気持ちと、DeNAが会社としてできることと、社会から要求されることが一致して、教育に取り組んでいるということです。ただし、まだ事業化のめどは立っていないので、現在はCSRとして活動しています。

——南場会長は、いつから教育に関心があったのでしょうか。また、教育に携わる中での気づきなどがあれば教えてください。

 もともとうちの会社は、2008年からITや携帯電話の健全な利用に向けて、小中高・専の生徒に対して出張学習をしたり、企業訪問の機会を設けたりしてきました。これまでに約16万人の生徒に、インターネットで危険な目に遭わないように、楽しく有意義に使おうという啓蒙をしています。そして、これをさらにプログラミング教育に発展させたのは2014年6月で、こちらも3年が経ちました。ですので突然、教育と言い始めたわけではありません。

 プログラミング教育に関しては、私たちは初等教育にこだわっています。しかも、希望者だけでなく全員。日本人であればデフォルトでコンピュータと対話ができるような国にしたいと思っているんです。プログラミング教育では、2014年度の佐賀県武雄市の公立小学校を皮切りに、義務教育の現場に入って、小学1年生に対してビジュアルプログラミングを用いてプログラミングの考え方を教えたり、一緒にもの作りをしたりしています。


2017年10月に開かれた渋谷区立千駄谷小学校でのプログラミング体験授業の模様

 「小学1年生にはできないんじゃないか」という意見もありましたが、やってみて、そんなことは一切なくて、むしろちょうどいいタイミングだと確信を得ました。生徒たちは嬉々としてプログラミングをしていますし、すぐに次のステップに進みたいと言います。彼らはクリエイティブの発露をそこに見出したわけです。また先生方にとっても、教えることはそんなに難しくはありません。当初はプログラミングという言葉にちょっと距離感を覚えられて、少し不安に思われたかもしれませんが、実際に体験された先生たちは、皆さん自分たちで教えられるようになりました。中には、転勤先の別の小学校でもプログラミングを教えた先生もいるくらいで、そこは全く心配なく気持ち一つだなと思います。

 私たちも社内から小学校に講師を派遣しているのですが、教育のプロではないので担任の先生とコミュニケーションしながら進めていまして、非常に良い連携ができていると思います。やはり、義務教育でプログラミングをやることは可能だし、重要だし、有益であるということを確信をもって言えますね。

——DeNAが手がける教育の強みは、やはりゲーミフィケーションの要素なのでしょうか。

 そうですね。あまり「こういけばこうなります」とか「ここの障害物を避けなければいけません」といった内容にしてしまうと、他の教科と同じで間違えてはいけないものになってしまいます。でも、プログラミングはあくまで道具にすぎません。もっともっと発展していくコンピュータに、自分の意思を伝えられるものだということを子どもたちに理解してもらって、その先にある夢や想像を膨らませてもらうことが一番大切です。

 我々が、ゲームやエンターテインメント事業を展開する中で、やはり「楽しんでもらってなんぼ」というところはあります。ですので、子どもたちに対して楽しんで学んでもらう部分に関しては得意分野なのかなと思います。

——現在は初等教育を対象にしていますが、今後、小学校高学年以降にサービス提供範囲を拡大する予定はありますか。

 プログラミング教育については、すでにいろいろな企業が取り組んでいるのですが、初等教育については、まだ参入しているプレーヤーが少ないんですよね。我々は、世界を変えていきたいと思って教育に取り組んでいるので、すでにプレーヤーがいるところに行くよりも、あまり手がつけられていないところに挑むほうが、やりがいを感じますし、意義もあると思っています。

 ただし、武雄市で2014年にプログラミングを教え始めたときの小学1年生は、いま4年生になり、市内の学校に提供された「Pepper」のプログラムに取り組んだりしています。高学年以上はさまざまな教材があるので、学校や自治体の要望次第で教材を選択してもらえばいい。私たちとしても、いきなりサポートをやめるということはしたくありませんので、どこかのプレーヤーに橋渡しをしてあげるとか、他にも何か考えていきたいですよね。いままさに検討しているところです。

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