前述したように、同イベントではグループワークのほか、ポスターセッション形式の個人発表であるLearning Market Placeも用意された。全教育者の取り組みが一同に展示される様は圧巻で、教育者たちが民族衣装で発表したり、与えられたスペースを色鮮やかにデコレーションしたりと、楽しい雰囲気で交流できる場となっていた。
Learning Market Placeで海外の教育者たちが展示した内容は、実に多彩だ。筆者が直接話をした教育者の事例を紹介すると、Skypeを活用して都市部と過疎地域をつなぐ遠隔授業(韓国)、Minecraft:Education Editionを使って持続可能な村を考える課題解決型学習(ブラジル)、micro:bitを活用したプログラミング教育(カナダ)、ARを活用した理科の実験(サウジアラビア)、Wikipediaを活用したメディア・リテラシーの授業(チュニジア)、先生が生徒にswayの使い方を教える活動(セルビア)など、あらゆる教育活動の事例を一度に見ることができた。
海外の教育者が展示した実践事例を特徴づけると、グループで取り組む課題解決型学習の多さが見て取れる。そのプラットフォームとしてOffice365が日常的に使われており、たとえ小学校であっても「クラウド上でドキュメントを共有する」「学校の作業のつづきを自宅のPCで行う」「自宅に帰ってからもグループでオンラインによる協同作業を行う」「分からないことを専門家にメールで聞く」と言ったことが日常的に行われている。こうしたクラウドの活用は、まだまだ日本の教育現場では実施しているところが少ない。ネットの学習利用に関しては、日本は本気で意識を変えなければならないだろう。
では、日本から参加した教育者たちは、Learning Market Placeでどのような取り組みを披露したのだろうか。日本チームの中で海外の教育者の興味を引いたのは、愛知県江南市立西部中学校・岩田智文教諭だ。同教諭は遠隔授業に取り組んでおり、大学の研究室と中学校をSkypeでつないで、生物学の専門家と定期的にインタラクティブな授業を実践している。
ほかにも、Studuinoとブロックで作成したウォシュレット付きトイレや、Minecraft:Education Editionで化学が学べる「ケミストリーリソースパック」を活用した授業など、楽しく理科が学べる事例を展示した。海外の教育者たちは、岩田教諭が展示した作品を手にとりながら、興味深く質問する様子が見られた。
以上のように、Microsoft Education Exchange 2018では、さまざま国の教育者らが集まり、互いの教育実践を共有したり、新たなレッスンプランを創造したりするコラボレーションに取り組んだ。未来を生きる子どもたちのために、教育者は何をすべきか。ここで共有されたパッションは、おそらく自国の教育に還元されることだろう。
もはや今の時代、教育においてもテクノロジを使うことは当たり前である。問題は、それを使って既存の概念や価値観をどう変えていくか。変えていける人になるか。そのためには、子どもたちを先導する教育者の成長思考(Growth mindset)が欠かせない。
そのひとつの手段として、教育者たちがこのような海外研修に参加することは有効だ。2019年も、世界に向けて挑戦する教育者があとに続くことを願う。
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