世界中の教育者が集結--マイクロソフト教員研修「Education Exchange 2018」現地レポート - (page 2)

教員同士が実践を発表し合う「Learning Market Place」

 前述したように、同イベントではグループワークのほか、ポスターセッション形式の個人発表であるLearning Market Placeも用意された。全教育者の取り組みが一同に展示される様は圧巻で、教育者たちが民族衣装で発表したり、与えられたスペースを色鮮やかにデコレーションしたりと、楽しい雰囲気で交流できる場となっていた。

 Learning Market Placeで海外の教育者たちが展示した内容は、実に多彩だ。筆者が直接話をした教育者の事例を紹介すると、Skypeを活用して都市部と過疎地域をつなぐ遠隔授業(韓国)、Minecraft:Education Editionを使って持続可能な村を考える課題解決型学習(ブラジル)、micro:bitを活用したプログラミング教育(カナダ)、ARを活用した理科の実験(サウジアラビア)、Wikipediaを活用したメディア・リテラシーの授業(チュニジア)、先生が生徒にswayの使い方を教える活動(セルビア)など、あらゆる教育活動の事例を一度に見ることができた。



各国の教育者たちが自身の教育活動を発表し合う「Learning Market Place」。教育者同士が気軽に声をかけ合いながら、直接交流できるのが特徴

 海外の教育者が展示した実践事例を特徴づけると、グループで取り組む課題解決型学習の多さが見て取れる。そのプラットフォームとしてOffice365が日常的に使われており、たとえ小学校であっても「クラウド上でドキュメントを共有する」「学校の作業のつづきを自宅のPCで行う」「自宅に帰ってからもグループでオンラインによる協同作業を行う」「分からないことを専門家にメールで聞く」と言ったことが日常的に行われている。こうしたクラウドの活用は、まだまだ日本の教育現場では実施しているところが少ない。ネットの学習利用に関しては、日本は本気で意識を変えなければならないだろう。

 では、日本から参加した教育者たちは、Learning Market Placeでどのような取り組みを披露したのだろうか。日本チームの中で海外の教育者の興味を引いたのは、愛知県江南市立西部中学校・岩田智文教諭だ。同教諭は遠隔授業に取り組んでおり、大学の研究室と中学校をSkypeでつないで、生物学の専門家と定期的にインタラクティブな授業を実践している。


愛知県江南市立西部中学校・岩田智文教諭の展示は、海外の教育者らが多く足を止めた

 ほかにも、Studuinoとブロックで作成したウォシュレット付きトイレや、Minecraft:Education Editionで化学が学べる「ケミストリーリソースパック」を活用した授業など、楽しく理科が学べる事例を展示した。海外の教育者たちは、岩田教諭が展示した作品を手にとりながら、興味深く質問する様子が見られた。


愛知県総合教育センター協力研究員 愛知県江南市立西部中学校 理科主任 岩田智文教諭。Minecraft:Education Editionを教育実践が豊富で、「ケミストリーリソースパック」を活用してカイロを作ったり、プログラミングでピクセルアートを作成する取り組みを紹介した

和歌山市立東中学校 角田佳隆校長。AR(拡張現実)の技術を使用した東京書籍の「マチアルキ」システムの事例を展示した。不登校の生徒に配布するプリントにARを組み込んだり、街中のスポットに防災時の避難場所や物資の情報を盛り込むなど、AR技術を活用した教育活動を紹介した

札幌市新陵小ミニ児童会館館長(元札幌市立福井野中学校校長)の堀田隆史氏。 地域の中学校や子どもたちを対象に行っているMinecraft:Education Editionを活用したプログラミングの授業やワークショップを展示。マインクラフトの起伏のある地形を活かして、万里の長城をプログラミングで築く取り組みなどを披露した

大阪府立堺聴覚支援学校 稲葉通太教諭。“地下鉄の運転手なりたい”という夢を持つ聴覚障害のある生徒がPowerPointを使って自分の夢をプレゼンテーションし、大阪府の地下鉄運転士チームとコラボレーションした取り組みを披露

西町インターナショナル 初等部日本語カリキュラムコーディネーター堀井清毅教諭。森林保護をテーマにした課題解決型学習や「森林えほんコンテスト」の取り組み、Minecraft:Education Editionを活用した学校紹介の事例などを展示した

千葉大学教育学部附属小学校 小池翔太教諭。小学3年生を対象に、ゲーミフィケーションの理論を用いて楽しく学べるプログラミング授業を紹介。Hour of Code、Minecraft:Education Edition、micro:bitなどを活用した実践を展示した

テクノロジを“使って変えること”が重要

 以上のように、Microsoft Education Exchange 2018では、さまざま国の教育者らが集まり、互いの教育実践を共有したり、新たなレッスンプランを創造したりするコラボレーションに取り組んだ。未来を生きる子どもたちのために、教育者は何をすべきか。ここで共有されたパッションは、おそらく自国の教育に還元されることだろう。

 もはや今の時代、教育においてもテクノロジを使うことは当たり前である。問題は、それを使って既存の概念や価値観をどう変えていくか。変えていける人になるか。そのためには、子どもたちを先導する教育者の成長思考(Growth mindset)が欠かせない。

 そのひとつの手段として、教育者たちがこのような海外研修に参加することは有効だ。2019年も、世界に向けて挑戦する教育者があとに続くことを願う。

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