大きな円形のゲートを通り抜けた筆者が「iPad」を通して目にしたのは、熱帯の島だった。振り向くと、椰子の木越しに太陽の光が差し込む。そびえ立つ巨大なウォータースライダー。カバナとハンモックも見える。と言っても、見えているのは平たいタブレットの画面上だ。この仮想バケーションでリアルに存在しているのは、手に持ったココナツドリンクと、丁寧に並べられたデッキチェアだけ。
すべては、クルーズ会社Royal Caribbeanが主催しているイベントの光景である。「Perfect Day Island Collection」と題したプライベートアイランド旅行の、新しいクルーズコースを宣伝するイベントだ。実際の外気温は0度に近いし、何日か前の雪かきでまだ筋肉痛も残っている。だが、マンハッタン、イーストリバーのサウス・ストリート・シーポートにあるこの建物の4階は、特別な空間に早変わりしている。2019年にバハマ諸島にオープンする新装のリゾート「CocoCay」を宣伝するためのプロモーションだ。
Royal Caribbeanはこれまでも、没入型の技術を利用してクルーズ体験を向上できるように工夫を試みてきた。仮想現実(VR)、脱出ゲームなどだ。壁一面のスクリーンを設置したスイートも予定している。だが今のところは、拡張現実(AR)とVRを利用して、クルーズ商品をより効果的に売り込もうとしている。Royal Caribbeanは、同社の所有するプライベートアイランドとその施設を垣間見ることができるiPad用アプリを開発した。このアプリを使えば、島を「歩き回って」、写真や動画を撮ることができる。筆者が体験したのは、まさにこれだった。
イベントでは、100人超のゲストがiPadの画面を見ながら、SF映画「スターゲイト」に出てくる環状遺跡さながらの円形ゲートを通り抜けて歩き回った。その動きを、天井に設置された60個の赤外線カメラで追跡する。そのときにターゲットになるのが、iPadに取り付けられた大きなトラッキングモジュールだ。タブレット上のARとVR式の室内トラッキングを組み合わせたような効果だった。
これで旅行に行きたいという気分にはそれほどならなかった。
それより良かったのが、VRでの熱気球体験だ。島では実際に熱気球に乗れる予定だが、ここでは上空400フィート(約120m)から島の全景を見下ろす体験がシミュレーションされた。HTCのVRヘッドセット「Vive」を装着して、再現された熱気球のゴンドラに乗る。実在するレールをつかんで身を乗り出し、VRの島の景色を見下ろす。景色は、同社がレンダリングを設計したもので、楽しい体験だった。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス