佐々木氏はより具体的な例として、「企画・開発領域」「生産・物流領域」、さらには自治体との連携においてヤフーが貢献可能なアイデアを提示した。まず「企画・開発領域」については、サーチエンジンから得られたデータとの連携を提案。たとえば「哺乳瓶」にもう1つのキーワードを組み合わせた検索では、同じユーザーでも赤ちゃんの誕生前と誕生以降の時間経過でキーワードが変わることがわかっているという。
誕生前は「準備」や「購入」を組み合わせることが多く、誕生後は「使い方」「飲ませ方」に、さらに時間がたつと、旅行にどのようにして持って行くかを調べるケースが多いとのこと。製品を新たに企画するような場合、こういった時間経過によるユーザーの関心の移り変わりを踏まえることで、ニーズにマッチするヒット商品を生み出せる可能性があるだろう。
「生産・物流領域」についてはアパレル業界を引き合いに出した。アパレル市場は需要予測が最も困難な市場の1つとされ、年間35億着生産される衣料品のうち、20億着が廃棄処分になっているとも言われる。しかし、ヤフーのデータを用いることで地域ごとの需要予測が可能だとし、アパレルメーカーがそれに応じた生産量調整や在庫の移動が可能になり、場合によっては物流の効率化にも貢献できるかもしれないとする。
自治体との連携においては、「隠れ避難所」の発見にヤフーのデータが使えると話す。熊本地震の際、正式な避難所ではないために物資が届かない問題がクローズアップされた隠れ避難所だが、単純に人の集まっている場所のデータを分析するのではなく、時系列で人の動きを分析することで、実際に隠れ避難所の詳細な場所を把握できることがわかったという。
2月6日の発表に関連して、ヤフーはすでに自動車メーカーの日産自動車らとビッグデータ連携の実証実験を進めている。自動車の車種ごとの販売数と、その車種のサーチエンジンでの検索回数には「明らかに相関関係があることがわかった」とし、日産のもつディーラーへの来客数、広告出稿数などのデータと組み合わせることで、さらに精度の高い販売台数予測につなげられるとしている。
また、自動車のブランドイメージに関するアンケートをたびたび実施している日産だが、その代替手段としてヤフーの検索データを利用することも考えている。検索データを用いることにより、高い頻度で、圧倒的に多いユーザーを対象にした調査が可能であることから、より正確で時間的なズレの少ないブランドイメージ調査が行える可能性についても触れた。
今後は需要予測や市場調査の代替としての実用可能性を探るだけでなく、モビリティ市場全体におけるニーズやユーザー行動の捕捉が可能かを検証するとしており、佐々木氏は「既存、新規のビジネスの創出に貢献したい」と話す。大企業だけでなく、「小さい商店、小さい自治体とも取り組んでいきたい」とも述べ、連携の裾野を広げていくことで「日本全体で、日本全体のデータを利活用できれば、経済活性化につながるのでは」との将来像を語った。
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