AppliedVRの最新の臨床研究では、VRを使用した患者の痛みが52%軽減されたことが判明した。同社最高経営責任者(CEO)のMatthew Stoudt氏によると、その軽減率はオピオイドを摂取した場合と同等だという。
VRがオピオイドや鎮痛剤に完全に取って代わることはないだろうが、この結果は、処方薬に飛びつく前にVRを試す価値があることを示唆している、とStoudt氏は話す。
CHARIOTプログラムを共同で立ち上げた小児麻酔医のSam Rodriguez博士によると、商用ゲームの多くは、あまりにも暴力的すぎる、もしくはキャラクターが死亡するとそこで終わってしまうので、病院環境には適さないという。患者が今まさに注射を打たれようとしているときに、突然メニュー画面に移って動けなくなってしまったら、問題だ。
CHARIOTプログラムがWeightless Studioのような開発企業と協力するのは、そのためである。Weightless Studioは、特に痛みを伴う経験をしている患者を想定したVRコンテンツを制作している。開発者はコンテンツをカスタマイズして、患者が頭をそれほど動かせず、横になっている状態でもうまくプレイできるようにすることが可能だ。そのため、患者が単にバーチャルな空間を見上げているだけ、といったことにはならない。それらのゲームには流血シーンが一切なく、レベルというものがないので重要な場面でVR体験が終わってしまうこともない。
Rodriguez博士によると、病院でVRを導入する際に生じる大きな課題は、感染が起きないよう対処することだという。スマートフォンは患者が使うたびに徹底的に拭き清め、ゴーグルのヘッドストラップなどは時折交換する必要がある。
Spiegel氏は、VRを医療プロセスに組み込む方法を考え出すのも難しい問題だと話す。電子的な医療記録を通して、例えば医師が患者に仮想現実を「処方」できるようにするといった形が考えられる。医師が患者の状態に応じてVRの視覚体験を選び、(仮にオピオイドを使用する前の選択肢として)VRを使用すべきタイミングを判断してもいいかもしれない。
目標は、患者にVRをずっと使い続けてもらうことではなく、VRヘッドセットがなくても、痛みから気をそらす方法を呼び起こせるように患者を訓練することだ、と同氏は言い添えた。
研究者らは、VRが慢性的な痛みに効果を与える潜在的可能性も調べている。例えば、パッカード小児病院のCHARIOTプログラムでは、慢性的な下肢の痛みに苦しむ子供たちが仮想環境で理学療法を行えるように支援するソフトウェアの設計に取り組んでいる。
それは、Blaine君のような患者の人生に既に違いをもたらしている。Blaine君はパッカード小児病院に3週間入院した後、最終的にサムスンのGear VRキットを自分用に購入した。
「家に帰って服を着替えるのが、実は少し楽しみなときがあるんだ。VRを使えるからね」(Blaine君)
母親のTamaraさんは、Blaine君がまさかそんなことを言うとは思ってもみなかっただろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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