調査会社GlobalDataでアナリストを務めるAvi Greengart氏は、次のように語った。「効果があることが科学的に証明されれば、それはVRの素晴らしい応用例になるだろう。1年半後には、VRの装備が医療分野で広範に普及しているかもしれない。一般ユーザーのリビングルームには普及していないかもしれないが」
シーダーズ・サイナイ病院は、ロサンゼルスに拠点を置くコンテンツプロバイダーAppliedVRとの提携を通じて、サムスンのGear VRを利用している。患者はゲームだけでなく、バーチャルでビッグサーやロンドンといった場所に連れて行ってくれるコンテンツも選ぶことができる。
「そのコンテンツは、文字通り脳をだまして、自分が全く別の場所にいるように思い込ませる。病院からヨセミテに連れて行ってくれる。木々の匂いを嗅ぎ、顔が太陽で照らされているのを感じることができる。そして、自分が本当にそこにいるような感覚になる」。潰瘍性大腸炎でシーダーズ・サイナイ病院に通院している34歳の患者のHarmon Clarkeさんは、そう語る。
Clarkeさんは注射針が苦手だ。点滴ラインを挿入するのに、8人の看護師が必要だったこともある。VRを使い始めてからは、何の問題もない。「通院のたびに、私は病院に電話して、VRキットを利用できるかどうかを確認する。VRはそれほど重要だ」(Clarkeさん)
VRに痛みを軽減する効果があることを発見したのは、シーダーズ・サイナイ病院やパッカード小児病院が初めてではない。ワシントン大学ヒューマンインターフェース技術研究所のHunter Hoffman氏のような研究者らは10年以上前から、VRがやけど患者などに及ぼす効果を研究している。しかし、Hoffman氏が使用する機器は、数万ドルというコストがかかる。
「われわれがやったのは、Gear VRやAppliedVRソフトウェアなどの最新かつ最高のハードウェアとソフトウェアを病院に持ち込んだということだけ。これまで、こうしたことは世界中の一流の研究所や心理学部でひっそりと行われていた」。シーダーズ・サイナイ病院のSpiegel氏は、そう話す。
シーダーズ・サイナイ病院が2015年にVRセラピーの提供を開始して以来、同病院の2500人近くの患者がそれを利用してきた。Spiegel氏によると、それは整形外科などの分野で状況を一変させる可能性もあるという。整形外科では、手術を受ける患者に、鎮痛作用のあるオピオイドを投与することが多い。そして、オピオイドを常習的に使用するようになる患者も多くいる。
「オピオイドを大量に投与することによって、病院で依存性の種をまいてしまっている。少なくとも、非薬理学的な方法で痛みを軽減できる仮想現実などのテクノロジを試す機会を(患者に)提供するべきだ」(Spiegel氏)
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