ITで脳ドックを安く身近に--AIや遠隔診断を駆使した「メディカルチェックスタジオ」 - (page 3)

ハードワーカーは要注意--脳ドックで異常が出やすい人の条件

 「IT企業などで夜遅くまで仕事をする人や、昨日も徹夜だった」という人の異常検知率は高いと言う。過度なストレスは、想像以上に脳によくないようだ。

 「脳MRIは、動脈硬化、動脈瘤(りゅう)、脳腫瘍も検出できます。最近、若年者でも白質病変という所見がみられることがあります。以前は高血圧が最大の要因とされていましたが、ストレスや睡眠不足などでも引きおこすことがわかってきました。ストレスでずっとアドレナリンが出続けていると、血管や脳の組織がダメージを受けてしまうんですね。ライフスタイルの悪化によって血圧が高くないのに白質病変が起きることも新たな知見です。やはり、睡眠不足、運動不足、食事の乱れ。特に、ニコチン(タバコ)を吸っている人は脳の血管を収縮させます。今日も白質病変が見つかった方がいるのですが、自覚症状は何にもありません。ただし、1日30本40本と吸っている人でした」

 では、高齢になってもきれいな脳を持つ人の特長はあるのだろうか。

 「だいたい、運動している、睡眠をとっている、タバコを吸っていない──この3つがそろっている人です。逆に引っかかってくる人は、運動していない、睡眠時間が短い、タバコを吸っていることが多い。お酒でひっかかる人はいませんが、飲み過ぎると前頭葉が萎縮するので、怒りっぽくなります。いわゆる“酒飲みのじいさんが怒りっぽい”のは、だいたい前頭葉が萎縮して感情がコントロールできなくなるからかもしれません」

“未病”の発見で医療費の削減を

 会社員であれば、定期健康診断が義務づけられているため、年に1度は健康診断を受けているだろう。血圧やコレステロール値、メタボリックシンドロームなど、なにか異常が見つかっても、忙しいからそのまま放置、というのもよく聞く話だ。でも、少し考えを改めたほうがいいかもしれない。

 「40歳代の方に、動脈硬化が見つかりました。健康診断でコレステロール値が高いと診断されても、なんの症状もないので放っておいているんですね。この場合、動脈硬化はあるけれど、この段階で治療を開始すれば、未病で治療ができるということ。早期に発見できれば、運動療法と食事療法で治せることも多く、そうすると医療費はかからない。あるいは、薬でよくなったりする。将来、脳梗塞や心筋梗塞になる前に治しておけば、高齢者になっても元気でいられる。その結果、保険診療の破綻も防げます」

運動、睡眠、タバコの3つがキーポイントという
運動、睡眠、タバコの3つがキーポイントという

 年間の国民医療費(平成27年度)は、約42兆円。国家予算が約97兆円だから、その半分近くが医療費という規模になる。そのうち公費として国が約16兆円を負担している。

 「以前は高齢者の医療費は無料でしたが、負担率が上がっていますよね。そのうち5割負担になったらどうなるでしょうか。そのうちお金持ちだけ医療を受けられて、普通の人は受けられなくなります。“病気にならない人”を増やせば保険診療を維持できるのではないでしょうか」

 脳ドックを推奨する年齢はあるのだろうか。

 「一般的には40歳以上と言われています。なお、乳がん検診や子宮がん検診はポピュラーですが、実はがんの死亡率の割合としてはそれほど多くありません。女性で一番多いのは、大腸がんで、便秘などが原因といわれています。2番は肺がんです。タバコを吸っても吸わなくても女性は2番。なのに肺ドックや大腸の検査率は低いんです。

 男性は、以前は胃がんが多かったけれど、いま1位は肺です。タバコとPM2.5が原因と言われていますね。レントゲンで見つかる肺がんはほとんど手遅れなんです。CTで見ると80%が早期がんなので、もし見つかっても予後がよくなる。特に女性はレントゲンで見つかりにくいんです。特にタバコを吸っている人や受動喫煙、40歳以上は肺ドックを受けたほうがいいですね。新たなオプションとして、気軽に脳ドックに来たついでに肺ドックも受けられるようにする予定です」

2016年最新がん統計(出典:国立がん研究センター)
2016年最新がん統計(出典:国立がん研究センター

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