CES 2018では、テクノロジによって、ヘルスケアが診療所の外まで拡大していることがはっきりと示された。バイタルサイン(脈拍や血圧などの生命兆候)を追跡したり、心電図をとったり、紫外線への暴露をモニタリングしたりできるコネクテッドデバイスが多数展示された。そのデータは、健康的な習慣を築こうとしている患者への指導や、医師の職務に役立つ洞察につながる可能性もある。
しかし、情報が多すぎても困る。それは、米国時間1月9日にCESで開催されたコネクテッドヘルスケアに関するパネルディスカッション(米CNETが司会を担当)で、専門家たちが提起した最大の懸念だった。過剰なデータは、時間やリソースが逼迫している分野に混乱をもたらすこともある。
Doctor on Demandの最高医療責任者(CMO)を務めるIan Tong氏は、「データの量は多すぎない方がいい」と語る。Doctor on Demandは、ビデオ通話で医師の診察を受けられるサービスだ。「データは、目の前の状況と関連のあるもの、そして、有益なものでなければならない」(Tong氏)
さらに、生のデータを医師に手渡しても、ウェアラブルヘルスデバイスによって収集された情報を最大限に生かしきれないこともある。
非営利研究組織Institute for the Futureの研究者であるEri Gentry氏は、「洞察を得ることはできるが、それが現時点では必ずしも医学的に重要でないこともある」と述べた。スマートホームやコネクテッドカーは豊富な情報を収集できる環境だという。
Gentry氏によると、医療技術業界はアルゴリズムと人工知能を使って、ヘルスデータを最初に記録した後、それらの数字を処理してパターンを見つける必要があるという。
医師はそのデータのソースも念頭に置いておかなければならない。これは最も重要なことだが、医師は、それらのデータが米食品医薬品局(FDA)による厳格で長期にわたる認可プロセスを経たデバイスによって収集されたものかどうかを考慮する必要がある。
とはいえ、Samsung Electronics Americaでヘルスケアおよびフィットネス部門を統括する医師のDavid Rhew氏によると、医師はFDAによって精度を保証されていないデータを必ずしも無視する必要はないという。
例えば、スマートウォッチで計測された患者の脈拍数は実際の数値と少しだけずれていることもあるかもしれないが、それでも、医師はその計測値を使って、意識を失った人の心拍数が正常な範囲内であることを確認できる、とRhew氏は語った。
「これらはFDAの認可を受けたデバイスではないが、われわれがそれらのデバイスから収集できる情報もある」(Rhew氏)
Alphabet傘下の企業で、主にヘルスデータを扱うVerily Life Sciencesで眼科ハードウェアのテクニカルリードを務めるBrooke Basinger氏は、その情報を賢く利用して、前後の事情を考慮し、一定の分析を行えば、既に高度な技術を持つ医師がさらに大きな力を発揮できる、と話す。
「例えば、その情報の一部をハーバード大学の心臓病学者に提供することができれば、彼らはより多くの情報に基づいて、より意味のある、洞察に満ちた決定を下すことができる」(Basinger氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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