スマートフォンネイティブが見ている世界

SNSで鬱になる?10代が楽しんで使うコツとは - (page 2)

満足できず比較してしまい鬱になる

 人は誰でも自分のことを語ることが好きだ。そして、「いいね」や肯定的なコメントなどで認めてもらえるととても嬉しい。だから、SNSの利用時間は長くなる。

 LINEを利用し始めたばかりのある女子小学6年生は、「友だちといつもつながれていることがとても嬉しい」と目を輝かせる。それまで顔を合わせてのおしゃべりだけだったのに、家に帰ってからも会話できることが楽しくて仕方ないようだ。「テレビの感想を送ってもすぐに友だちの感想が送られてくるし、学校のおしゃべりの続きもできる」。

 10代の子たちは、友だちが一番という年代だ。しかも、まだ何者でもない彼らはいつも漠然とした将来の不安に駆られており、認めてもらう経験にも飢えている。だからこそSNSにはまるのは、非常に納得がいく。では、SNSの利用時間が長いと、なぜ精神的に悪影響が出てしまうのだろうか。

 先程の女子小学生は、「(LINEのタイムラインで)親友が休みの日に他の子を家に呼んでいたことが分かって、落ち込んだことがある。私は呼ばれなかったから」と言う。SNSを使うことによって、普段なら手に入らない、手に入れる必要がなかった情報が豊富に入ってくる。たとえば友だちの幸せそうな羨ましくなるような投稿や写真、自分には「いいね」をくれないのにほかの人には「いいね」をする友だち、自分は呼ばれていない楽しそうな会合などだ。

1日2時間程度に快適な範囲で楽しむこと

 SNSはつながりを感じたり、友だちからの暖かい反応によって幸せになれる。しかし一方で、他人と比較して劣等感や嫉妬を感じたり、ほかの人の心に疑いを持つようになってしまうことがある。楽しい範囲で親しい人たちと使えるなら、SNSはとてもいいものだ。しかし長い時間使いすぎることで、つながりたくない人とつながったり、余計な情報が入ってくるようになったりすることで不幸せになってしまうことがあるのだ。

 冒頭でご紹介した論文を発表したTwenge氏も、スマートフォンなどを使うなと言っているわけではない。Twenge氏いわく、「リサーチを元に考えると、どの年齢層でも電子端末は1日2時間ほどに抑えるのが最適」という。

 先程の小学生も、実際に友だちと顔を合わせて話すことを勧めたら、後日「今度週末に呼んでもらって遊ぶことになった」と嬉しそうにしていた。顔を合わせて話せば、文章だけや写真だけでは分からない、相手が自分に対して抱いている感情などが分かる。相手の心に疑念を挟む余地などもなくなるのだ。

 スマホを手放さない、つまり始終SNSを見続けるようになったり、他人の投稿にネガティブな感情を抱くことが増えてきたら、使いすぎの可能性が高い。SNSの利用時間を減らしたり、スマホを置いて外出したり、ほかのことに夢中になったりすることは精神衛生上大切なことだ。子どもたちには、SNSとうまく距離を置いて、快適に使うようにアドバイスしてあげてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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