パナソニックとソニーの有機EL部門を統合したJOLEDが、いよいよ印刷方式の21.6型有機ELパネルを発表した。LGディスプレイが採用している蒸着方式の有機ELパネルは、製造に時間がかかるが、印刷方式は短時間で効率良く製造できることがポイント。有機ELの普及には欠かせない技術の1つと言われている。
印刷方式はパナソニックが有機ELパネルで長く採用してきた方式で、JOLEDではこれに、ソニーの製造技術を組み合わせることで、有機ELパネルを開発。すでにソニーの医療モニタ向けに出荷しているが、CES 2018では新たにJOLED製の有機ELパネルを採用したASUSのプロフェッションモニタ「ASUS ProArt PQ22UC」を披露した。
実機を見ると、マット処理のため、テレビのような輝き感は少ないが、しっかりとしたコントラストと落ち着いた色再現性で、プロフェッショナルモニタと呼ぶに相応しい、感動の画質に仕上がっていた。
商品レベルですごくいいと感じたのがパナソニックの有機ELテレビ「FZ950/800」シリーズだ。パネル自体は2017年モデルと同様だが、画質を大きく改善。従来の“目に優しい”画作りから、新モデルはいい意味で精細感が高くなった。細部の違いがよく表現され、透明感、空気感を感じられる画質へと進化している。
どこが進化したのかというと「3次元ルックアップテーブル」と呼ばれるカラーテーブル。従来、固定方式だったものを適応型にすることで、色の再現性を向上。1つの色信号を見るだけではなく、前後の色信号や画面の流れを考慮することで、最適な色の指定ができるようになったという。
色再現性の向上は、階調感や解像感にも効果があり、全体的な映像品質が上がったと考えられる。従来の延長性ではあるものの、技術的に大きく進化した内容だ。欧米市場向けにはこの春にも登場するらしいので、日本への投入も近いだろう。
2018年の有機ELテレビは、比較的低価格モデルが登場してくると見られるが、パナソニックは低価格路線でも中身がしっかりと進化した内容になっている。
ソニーでは新画像エンジン「X1 Ultimate」が目を引いた。ソニーはデバイスにかかわらず高画質を実現する映像エンジンをうたっているが、その実力を発揮したのが現行の「X1 Extreme」。液晶テレビの「Z9D」シリーズと有機ELテレビの「A1」シリーズの両方に採用し、液晶でも有機ELでも高画質を実現した。
新エンジンは、スピードを2倍にして分析能力を上げ、オブジェクト処理能力をアップさせたことが特長。エンジン内にオブジェクトごとのデータベースを持ち、その特性を最大限に引き出す処理をしているという。
例えば「ぶどう」と認識していたものを「ぶどうの1粒」まで表現することで、リアリティを引き出すとのこと。人間を捉えれば、人間というだけではなく、性別や何歳ぐらいかまでを判断しているという。さらにX1 Ultimateでは、SDR信号にコントラストを付け、HDRの的な効果を与えることにも成功している。
LG、パナソニックにも同様のことが言えるが、今回のCESで目立ったのは、この解像度とコントラストの両方を掛け合わせることで画質を向上させている点。今までは解像度など単体での高画質化を追求してきたが、今回からは解像度とコントラストの両方を良くすることで、高結果を導き出す方法へと変化。これが画質に大きく寄与しており、今までは異なる高画質を実現している。
画期的な画質向上システムを提案しているアイキューブド研究所は、最新の高画質技術「S-Vision」を内蔵したUHD BDプレーヤーを披露した。船井電機での商品化、アイキューブド研究所が販売……などの検討が進んでいるという。
アイキューブド研究所は、ソニーで高画質化技術「DRC」を手掛けた近藤哲二郎氏が設立。2011年に4Kアップコンバート技術「ICC(Intelligent Cognitive Creation)」、2013年にプロジェクタ向けの大映像空間技術「ISVC(Intelligent Spectacle Vision Creation)」、2015年に「ICSC(Interactive -Cast Symbiosis Creation)」、2017年にこれらの技術を統合した「I3C(Integrated Intelligent Interaction Creation)」を発表してきた。
実際にS-Vision搭載のUHD BDプレーヤーを視聴したが圧倒的な画質だった。試作のS-Visionプレーヤーと船井電機の500ニッツ、65型SDR液晶テレビと、大手メーカーのUHD BDプレーヤーと1800ニッツの65型HDR液晶テレビを比較視聴したが、S-Visionが解像度、立体感という点で抜きん出た仕上がり。
海の中の橋を進むシーンでは、欄干が画面の外にまでてくるのような立体感と奥行き感を表現していた。
米国における日系ナンバーワンサプライヤーの船井電機とアイキューブド研究所が組むことによって、今までとは違う明らかな差異化を実現できると思う。UHD BDプレーヤーのみならずテレビへの搭載も期待したい。
ディスプレイジャンルではないが、番外編としてキヤノンのAIカメラ「ニュー・コンセプト・モデル」を紹介したい。これは一言でいうなら「忖度するカメラ」だ。ペンダント型の360度カメラで、顔認識技術の搭載により、特定の顔を認識すると瞬時に撮影してくれるというもの。AIを備えているため、撮影するべき顔を学習し、撮るべきシーンを逃さず記録する。
110度のチルト、360度のパンもできるほか、3倍ズームも実現。ブレ補正にも対応するなどカメラとしての性能も高い。革新的なAIカメラと言えるだろう。
もう1つ、スマートフォンに接続して撮影できる多用途望遠カメラ「マルチ・ファンクション・テレフォトカメラ」も「欲しい」と感じた1台。重さわずか100gで、400mmの望遠が可能。スマートフォンは広角が得意で、望遠はデジタルズームになり、画質が劣化してしまうが、これを使えば高画質の望遠を実現できる。キヤノンでは「望遠を身近に」をコンセプトにしていた。
2モデルともに発売は未定だが、良い意味で、“真面目”なカメラメーカーキヤノンのイメージを変える、革新的なモデルだと思う。
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