Appleの「HomePod」スマートスピーカが数週間のうちに米国などで発売される。最初の出荷分がついに工場から発送されたことが報じられた。
HomePodは当初、極めて重要なホリデーショッピングシーズンに合わせて2017年12月に発売されるはずだったが、Appleはその間際になって、「準備を整えるにはもう少し時間が必要」だと言い、発売を延期した。しかし、HomePodは少なくとも米国と英国、オーストラリアにおいて、近いうちに登場する。
つまり、HomePodは、Amazonの「Echo」スマートスピーカの発売から3年以上を経て(Echoはスマートスピーカ市場を切り開き、今も同市場で圧倒的優位を保っている)、そして、「Google Home」に1年以上遅れて、ようやく発売されることになる。さらに、サムスンやSonosなど、ライバルはほかにも多数存在する。
Appleはスマートスピーカの市場に参入する必要がある。なぜなら、これらのデバイスは音楽などのサブスクリプションサービスへの重要な入り口になりつつあり、さまざまなスマートホームガジェットに接続できるほか、買い物やゲームのプレイなど、ほかのいろいろな消費活動も促進するからだ。従来、そうしたことの多くはスマートフォンを通して行われていた。スマートスピーカ購入者の3人に1人は、スマートフォンを使用する時間が減ったと報告している。HomePodは、Appleが「Apple Music」を売り込むこと、さらに同社のデジタルアシスタント「Siri」の重要性を維持することにも寄与するだろう。スマートスピーカがスマートフォンに取って代わることはないが、それでも、Appleはこの分野でうまく成果を出さなければならない。
新しい市場への参入が遅れることは、ほとんどの企業にとって問題とみなされるが、Appleの場合、それは同社が何度も実践してきたモデルである。具体的には、他社に市場を確立させて、さまざまな失敗を犯す役目を任せた後、ライバルたちが解決できなかった問題を解消した上質な製品を携えて、突如その市場に参入するという形だ。
「iPhone」は決して最初のスマートフォンではなかったが、Appleはさまざまな要素を絶妙に組み合わせて、素晴らしい製品を作り上げた。同様に、「iPad」も最初のタブレットではなかった。さらに、「Apple Watch」が登場したのは、多くの企業が理想的なスマートウォッチを作ろうと試行錯誤していた後のことだった。
今回は、これまでと異なる部分もある。Appleのスマートフォンやタブレット、スマートウォッチは、それまで他社が抱えていた厄介な問題を解消したが、HomePodの場合、明らかにそうはいかない。
まだそうと決めるのは早いかも知れないが、現行のスマートスピーカ群の中で明らかな失敗作を見つけるのは難しい。ユーザーが話しかければ、それらのスマートスピーカは(ほとんどの場合)、求めたことをやってくれる。
確かに、音声認識には改善の余地があるし、自然言語処理ももっと賢くすることが可能だろう。だが、これらの技術は今後徐々に進化していくものだ。Appleを直ちに主役に押し上げるような飛躍的進歩はない。とはいえ、iPhoneの登場前、ほとんどの人は極小の物理キーボードで文字を入力し、目を細くして極小のスクリーンを見ることに満足していたことを考えると、Appleが私たちを驚かせる可能性はまだ残っている。だが、これまでのところ、われわれは初代iPhoneと同じレベルの技術革新を提供しそうな要素をHomePodに見出せていない。
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