2017年のテクノロジ業界を俯瞰すると、その枠を超えて最も大きな話題をさらったのはビットコインだったかもしれない。年初は1000ドル前後で始まったその価格は年末にかけて2万ドルへとする急騰を見せた。その他の仮想通貨にも資金が集まり、その傾向は2018年も続いていきそうだ。
久しぶりに年末の東京に帰ってくると、そのビットコインの取引をスマートフォンから行っている人を多く見かけるようになっていた。新しいテクノロジや金融のトレンドを引き受ける存在こそ、現在のスマートフォンなのだ。
Appleの2017年を振り返ると、いくつかのインパクトがある「数字」が見えてくる。今回は、この数字に着目して振り返っていこう。
Appleは、iPhoneの販売による売上が6〜7割を占める。この傾向は2017年も変化がなかった。現状変化がないことは、Appleにとってポジティブといえる。しかし、2017年のiPhoneは必ずしも盤石とはいえなかった。
2014年に発売したiPhone 6、iPhone 6 Plusで、Appleは中国を第2の市場へと押し上げた。しかしその中国市場が前年比で2桁減を続け、iPhoneの販売台数も2017年第2四半期に前年同期割れを記録し、第3四半期も微増にとどまった。
AppleはiPhone 6、iPhone 6s、iPhone 7と、着実にその性能を高めているが、デザインは異例となる3世代を引継いだ。iPhone 8もガラスの背面を採用したが、iPhone 6の形状を踏襲している。デザインが変わらなかったことが、新し物好きの中国での販売に響いたと分析し、Tim Cook CEOも指摘している。
2017年9月12日に行われたApple Parkでの新製品発表イベントでは、iPhone 8シリーズとともにiPhone Xが登場した。有機ELディスプレイを備え、ホームボタンを廃止し、Face IDという新しい生体認証を採用した特別なモデルとして投入された。
このモデルは、2つの意味で、iPhoneにとっての次の10年を示唆する存在といえる。
iPhone Xは、これまで10年iPhoneで採用してきた液晶ディスプレイとホームボタンという2つの要素を完全に排除した。特にホームボタンの廃止は、今後のApple製品の体験に波及していくことが予測できる。
特にホームボタンはiPadにも採用され、指紋認証のTouch IDはMacにも搭載されてきた。またiPhone 4Sに搭載された音声アシスタントSiriも、iPad、Apple Watch、Mac、Apple TVに搭載され、2018年に延期されたHomePodでも採用される。
iPhoneのユーザーインターフェースは、Apple製品全体の体験に波及され、iPhoneユーザーのスムーズな移行を目指していくことになる。iPhone XのTrueDepthカメラとFace IDは、今後のiPad、MacといったApple製品へ採用される布石となるだろう。
もう1つのiPhone Xの意味合いは、iPhoneのシフトチェンジを明確にすることだ。iPhone Xは、649ドルだったiPhoneのベーシックなモデルの価格を999ドルまで引き上げた。これまでのiPhoneの平均販売価格は695ドル前後であったことから、2018年第1四半期決算では、この価格が大幅に上昇する可能性がある。
スマートフォン市場の世界的な成熟で、今後販売台数の上昇が大きくは見込めない状況で、メーカー各社は買い換えや乗り換えの需要を喚起していくことになる。その際に、より効率的に売上高を高めるには、平均販売価格を高めて行くことだ。
iPhone Xが999ドルという価格を付けた背景には、有機ELディスプレイを採用し、組み立て原価が上昇している点にある。2018年にはSamsung以外のサプライヤーも加わることから、価格が下落することが期待されるが、しかし2018年モデルのiPhone Xが、2017年発売のiPhone 8と同じ699ドル(64Gバイトモデル)にまで値下げできるかどうか。個人的には、あまり期待しているわけではない。
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