マネーフォワードは12月29日、ブロックチェーン技術や仮想通貨を活用した送金・決済領域の研究を目的に「MF ブロックチェーン・仮想通貨ラボ」を設立すると発表した。今後、送金・決済領域において新サービスの立ち上げを目指すとしている。
同社は、個人向け自動家計簿サービス「マネーフォワード」のほか、ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」を提供。お金や経営の見える化を目指す上で、個人間および企業間の送金・決済領域において、既存の金融システムでは解決できない課題が存在することに気づいたという。
同ラボでは、個人や企業間、海外への送金・決済コストを従来の10分の1に圧縮することで、ストレスのない送金・決済サービスを提供するとしている。また、手数料の削減により、自動貯金やロボアドバイザー、クラウドファンディングといったFinTechサービスの価値向上につなげるほか、ブロックチェーン上にさまざまな契約情報を書き込むスマートコントラクトとしてのプラットフォームも目指す。
コアメンバーは、元日本銀行金融機構局企画役で同社執行役員の神田潤一氏ならびに、同社執行役員CTOの中出匠哉氏を中心に構成する。日本銀行や金融庁で制度設計や金融機関との対話に携わった神田氏のナレッジと、外国為替取引や外国為替証拠金取引システムの開発に従事した中出氏の経験を生かす。また、この分野でのキープレーヤーを獲得するほか、3年間で100名の人材を採用・育成するとしている。
神田氏によると、仮想通貨やブロックチェーンを使ったビジネスは、マネーフォワードとMFクラウドシリーズに続く3本目の柱として計画しており、仮想通貨交換業者としても登録するという。ラボの立ち上げについて、同氏は「個人・法人向けともにユーザー基盤が構築できており、データの蓄積も進んでいる。これにブロックチェーンの技術をかけ合わせ、全く新しいサービスを提供したい」としている。同社では、ブロックチェーン・仮想通貨の外部プレーヤーや金融機関との連携も検討するという。
神田氏は、金融庁時代に携わった改正資金決済法における仮想通貨の議論について「なぜ、資金決済法で仮想通貨の法制度を手当てするのか議論した際に、投資や投機の対象ではなく、ブロックチェーンをベースに将来の決済や送金のインフラにするべきと考えた。日本がイノベーションを含めてグローバルでリードできるよう、金融庁としては資金決済法で手当てすべく進めてきた」と述べた。
続けて「ところが今の状況はそうなっていない。投機や投資だけでなく、きちんと仮想通貨をブロックチェーン技術とともに実用的に使うことができれば、日本は世界に先駆けて新しい金融サービスのインフラを構築できる」とし、「しっかり弊社としてもコミットし、資金決済法で手当てした背景にある、仮想通貨・ブロックチェーンの利便性をマネーフォワードのユーザーに届けたい」と述べた。
決済・送金分野だと、Rippleなど既存プレーヤーも多い。中出氏は、「ネットの発展と同じようにパブリックなインフラを目指す」とし、特定の企業だけでインフラを支える中央集権型ではなく、パブリックなブロックチェーンを採用することで送金コストを下げようとしている。スマートコントラクトも内包するため、イーサリアムベースが検討対象だという。同氏は「弊社のユーザーであれば、手数料なしで送金できるような世界観を築きたい」としている。
仮想通貨は、改正資金決済法が施行されたあたりから価格が大幅に変動し、ボラティリティが高い状況が続いている。投機対象で取引されるケースが多く、売買手数料も大幅に上昇していることから、送金・決済手段としては使いにくくなっている。また、実証実験は進んでいるものの、送金・決済手段としてのビジネスでの展開はまだ限定的だ。同社では、ユーザーに仮想通貨のボラティリティリスクを取らせないよう開発を続け、2018年中にサービスを展開予定。後発組からこの分野での地位を確立したいとしている。
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