ターミナルが提供するのは、不動産情報を活用したおとり物件広告の検知や不正注文、空室詐欺を減らす、新しいソリューションだ。現在展開しているサービスは「trueper(トゥルーパー)」「adwhite(アドホワイト)」の2つ。いずれも不動産における入居状況や空室期間、賃料の変化といった賃貸物件の最新状態と変化を独自ロジックでデータ化することにより、成立する。
なぜ、不動産の要注意ポイントと言われるおとり物件広告だけでなく、不動産とは一見無関係のように思える不正注文、空室EC詐欺まで減らせるのか? その背景には業界の仕組みに精通したデータ取得方法と、それを精査するテクノロジの力がある。不動産営業やウェブマーケティング、不動産情報を使った他メディアへのコンテンツアライアンス提案などに携わってきた、ターミナル代表取締役の中道康徳氏に話を聞いた。
不動産情報の爆発的な増加が理由の1つに挙げられます。ここ数年、引っ越しを希望する一般消費者の数が減り、空室が増えました。同時に不動産業界におけるインターネット利用頻度が高まり、広告掲載数が大きく伸びています。
広告主単位でみても、広告掲載数が多くなっています。広告掲載数が多ければ多いほど、情報更新の手間がかかります。広告の性質上、最新情報を掲載することに積極的に取り組む分、その後の情報更新が追いついていないことが、食い違いの原因と考えます。
不動産情報サイトにおける賃貸情報では、広告掲載から次回更新まで1〜2週間の掲載可能期間を設けています。この期間内であれば、更新内容を反映させずとも指摘や罰則をうけることはありません。また、不動産情報サイトの広告を掲載する仕組みが日々効率化され、作業が簡単になりました。そのうえで、最新情報の登録に積極的な傾向なため、一度公開した情報の更新内容確認が厳かになることが積み重なりおとり広告が量産されます。この掲載可能期間は、契約者がいる賃貸物件にも適用されるため、実際は入居者がいる物件であっても、掲載情報は空室のままになっている現状につながっています。
――すでに入居済みなのに、空室になっている物件はどのくらいありますか。弊社独自調査になりますが、掲載可能期間内で更新しなくてよいものも含み、平均で2~3割は契約済の疑いがあります。広告主1社あたり全国平均30件程度の情報を取り扱っており、そのすべてを状態が変わる度に更新する行為はとても辛い。また、新しい情報の取得も加わる。加えて、情報取得手段が電話やFAXが中心で、より正確な情報を取得するのに電話先の都合が重なり、新しい情報を取得しつつ、掲載内容を最新の状態にするのは物理的に限界がある。それをテクノロジで解決しようと考えたのがtrueper開発の発端です。
――物件情報が更新されないとどんな弊害が起こりますか。空室情報として掲載された部屋に入居中の方からお叱りをうけます。また、広告主以外の不動産事業者から空室状態であるかの確認依頼が入ります。入居中の方などの一般消費者は、消費者庁などの行政機関に問い合わせるケースも増えており、悪質な行為が発覚した場合、罰金や業務停止命令にいたることもあります。これは、不動産業界全体にとって大きなマイナスで、根本的に変える必要があると思いました。
以前の不動産関連に関するお叱りの内容は騒音問題や設備故障が主でしたが、現在は情報をきちんと扱っていないことに対するお叱りが増えています。
――引っ越し先を探している人がインターネットの情報を見て店舗を訪れたとき「この賃貸物件は入居者が決まりました」という現実を知らされることにもなりそうですね。それも多いと思います。これには不動産事業者のユーザー獲得の方法にも問題があり、店舗を訪れてくれないと顧客になりづらいという現状があります。店舗に足を運んでもらう目的でおとり物件広告を掲載したり、最新状態をわかりにくくする側面がないとは言い切れません。そうした環境は、今後、変えていかなければ不動産業界全体のマイナスイメージが改善しません。
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