VRモデルを構築するため、テートモダンは、今では個人の自宅になっている実際のモディリアニの最後のアトリエを訪れた。このアトリエは、パリのカフェを含むさまざまな選択肢の中から選ばれた。
「これは、人々を一度も訪れたことのない場所に連れて行くチャンスになる。アトリエにはモディリアニ自身の物語が含まれているし、それが彼の作品と直結する。一方、カフェだと、その物語が散らばってしまう。われわれはモディリアニの最後のアトリエを訪れて測定し、VR体験のテンプレートとして使用した。VRの体験を、現実に存在する明確な1つの場所に植え付けられることは、すごく価値のあることだとわれわれには思えた」(Knight氏)
アトリエの内部を完成させるため、マッピングと史実調査を行うのに5カ月を要した。調査は、モディリアニとごく親しかった人々の記録をもとに進められた。例えば、アトリエのストーブについて、モディリアニのパートナーが描いたスケッチを調べ、次に当時のストーブが分かるほかの画像も探して、その中から一致するものを見つけるという作業が行われた。
「われわれは、通常の展覧会を行うときと同じ指針と要件、そして学術的にも厳密であることをVRにも適用した。新しいことを試みているからといって、例外は許されない」(Knight氏)
このようなハイテクをギャラリーで披露するのは場違いだと考える人もいるかもしれないが、Knight氏の考えは違う。「(このVR体験は)展示における役割を果たしている。壁に固定されてもいないし、目を見張るようなものでもない。だが、来場者が別の次元でその展示をじっくりと考え、理解し、つながりを見つけるひとときを与えるという、非常に明確な役割がある。そのことがはっきりしているので、ギャラリーに導入するにはハイテクすぎるのではないか、という疑問は一度も提起されなかった」(同氏)
モディリアニは1920年に結核性髄膜炎が原因で35歳で亡くなった。同氏が熱狂的な映画ファンだったことを示す証拠がある。映画は、同氏が絵画や彫刻を創作していた当時では、新しいテクノロジだった。従って、この展覧会がVRで拡張されているのも、同氏にふさわしいことなのかもしれない。
「アーティストは既にVRを使い始めている。多くのアーティストがこのテクノロジを利用して、芸術作品を生み出している。現在、芸術はさまざまな分野に広がりをみせているが、VRもその1つだ。VRは目的を達成するための手段や道具であり、人々がコミュニケーションをとるためのプラットフォームでもある」(Knight氏)
「現代のアーティストは、自分の時代の道具や形態、プラットフォーム、テクノロジに問いを抱いているはずだ。現代のわれわれは、そのテクノロジを使って過去を振り返ることができる」(同氏)
この展覧会はテートモダンで現地時間2018年4月2日まで開催されている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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