ハリウッドに普及しているテクノロジが、理学療法の分野にも浸透し始めている。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでキャラクター「ゴラム」の映像化を実現したのはモーションキャプチャ技術だったが、この技術は現在、理学療法に活用されつつあり、トレーナーの指導を受けながらの運動を、自宅のリビングにいながらにして可能にしている。
デジタルヘルス企業Reflexion Healthが提供する仕組みはこうだ。テレビをつけて、同社のプログラムを起動する。同社が開発した「VERA」というシステムに2台のカメラが接続されており、ユーザーはその正面に立つ。一方のカメラがユーザーの動きを録画して臨床医がそれを確認し、もう一方のカメラはユーザーの関節の動きを追跡する。
映画であれば、追跡した情報はコンピュータグラフィックスで生成されたキャラクターのアニメーションに使われることになるが、このプログラムではひとつひとつの運動をユーザーがどのようにこなしたかを診断する。
Reflexionのシステムでは、青と黒のトレーニングウェアを身に着けたアバターが正しい運動フォームを実演してみせ、患者はテレビを見ながらそれをまねる。このアバターの名前が「VERA」(Virtual Exercise Rehabilitation Assistantの頭字語)なのである。
VERAは、例えば、椅子の背につかまって右脚を横に上げるなどの動きを指示する。この運動で、ユーザーが左脚を前に上げていることが検出されると、正しく動かすよう指示してくる。
「臨床医が『この5種類の運動を1日に2セットやるように』と書いた紙を患者に渡したところで、その指示が守られるとは限らない」と、Reflexionの最高技術責任者(CTO)であるSudipto Sur氏は指摘する。一方、運動するよう促し、さらに実際に手伝ってくれるシステムがあれば、患者はもっとしっかり運動するようになるはずだ、と言う。
VERAは、私たちの日常生活にすでに入り込んでいる技術が、いよいよ医療の世界にも進出するようになった、その最新の一例にすぎない。米国では医師の多くが、病院から呼び出しを受けるときに、いまだに1990年代製のポケットベルを使っている現状を考えれば、これは特筆すべき変化だ。
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