近年、荷物の再配達問題が深刻化しているが、それは先進国にとって共通の悩みらしい。東南アジアではシンガポールでもオンライン通販の普及を背景に宅配便の数が急増。再配達による負担が社会問題化しており、日本と同じく宅配ロッカーの設置を中心とした対策が急がれている。
そんな中、斬新なアプローチでこの問題を解決しようとするサービスが誕生し話題になっている。荷物を代理で預かってもいい人と、預かってほしい人をマッチングする宅配サポートサービス「Park N Parcel」だ。宅配ロッカーよりも便利かつ安心な荷物の受け取りを実現しようとするもので、日本市場に参入する計画もあるという。
2017年1月に開始されたPark N Parcelは、オンライン通販で購入した商品を近所の人に代理で受け取り保管してもらうサービス。届け先の住所や訪問可能な時間帯、荷物の内容などの情報をもとに、預かってもいい人と預かってほしい人をマッチングする。
メインユーザーは、仕事で自宅を留守にしがちな忙しいビジネスパーソン。「Parker(パーカー)」と呼ばれる代理受取人は、自宅にいることの多い主婦や学生、リタイア層やビジネスオーナーのほか、カフェや小売店、コンビニなどの企業を想定している。パーカーには、荷物1つの代理受け取りにつき1シンガポールドル(約83円)が支払われる。
誰でもパーカーになれるが、登録時には氏名や住所、IDナンバー、銀行口座などの個人情報を提出する必要がある。パーカーに対するレビュー機能を設けており、信用を得られないパーカーが自然に淘汰されることで安全性の向上を図っている。「サービス開始以来、6000以上のパーカー登録数があった。しかし、レビュー機能により現在アクティブなパーカーは1200名ほどに厳選されている」と、Tech in Asiaの取材で明らかにしている。
パーカー1人が月に代理受け取りしている荷物の数は、平均して約10個。駅の近くや人通りの多い場所に住むパーカーの中には、月に100個の荷物を代理受け取りする人もいるという。
荷物を預かってほしい人が利用するには、まずPark N Parcelのサイトでアカウントを作成し、自宅の住所と荷物の詳細を登録。それらの情報をもとに近所のパーカーとのマッチングが成立すると、荷物の配達先に指定できる。
パーカーの元に荷物が配達されると、パーカーからEメールやSMSでその旨が通知され、配達日から5日以内の希望する時間に引き取りに行ける。利用料は、荷物1個につき2.5シンガポールドル(約210円)だ。
近年、シンガポールでも日本と同様に、郵便局や民間の宅配業者が街中に設置する共同宅配ロッカーの数が増えている。しかし、Park N Parcelの調べによると、利用者の自宅と宅配ロッカーとの間の距離は平均2.5キロメートル。それに対し、同サービスなら1キロメートル以内で荷物を受け取れるという。
また同社は、“ご近所さん” であるパーカーに預けることがユーザーに安心感を与えられると考えている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」