各種施策の中で、田村氏が特に力をこめて解説したのが「地域の豊かな情報」についての取り組みだ。
たとえば、地域住民の平均年齢などは役所などであらかじめ調べられる。「駅から徒歩○○分」「コンビニ至近」といった情報とはベクトルが異なるものの、街での暮らし方に何らかの影響を与えるはず。地域に確かに根ざしているのに、顕在化していない情報を明らかにし、かつAIなどを通じて検索できるようにすれば、部屋探しの在り方が変わるのでは、と田村氏は話す。
「その街に幼稚園があるかどうかだけではない。その幼稚園の運動会や卒園行事がどれだけ素晴らしいか、地域の方や園児のご家族は知っている。そういった『地域の豊かな情報』を、我々のリアル店舗がお手伝いして広めることができる」(田村氏)。
ハウスコムはAIに注力しているが、それはあくまでもリアル店舗とその従業員を補佐するための仕組み。対面での接客でなければ、顧客の真のニーズは引き出せないという。田村氏はその根拠として、ある住宅情報ポータルサイトの統計を例に挙げた。
この統計では、「満員電車でいいから職場の近くに住みたい」という人が近年増えていると結論づけられている。しかし、答えた人の事情は1人1人まったく異なって当然。在宅勤務できるのにしていない、満員電車が苦手なのではなく実は肩がふいに触れあうのが生理的にダメなだけ、満員電車に乗るといっても始発駅から座って本を読むのも1つの手……といった具合に、本人も気付いていない事情やニーズがある。現状のAIではそれを掘り起こせず、経験ある従業員と顧客との対話が欠かせないと田村氏は指摘する。
田村氏は今後のハウスコムの将来展望として、顧客のライフサイクルを意識した物件案内を、店舗カウンターで実現できないか検討していくという。たとえば、部屋の図面を間取りをAIで分析しておけば、子どもが生まれた時に部屋の間取りを変えられるか、手すりを付けられるか、車椅子が廊下を通れるかといった、数年〜数十年先に重要となってくる疑問を、あらかじめ解消しておくことができる。こういったきめ細やかなサービスにより、利用者の人生設計を住まい探しの観点からサポートしていきたいと田村氏は語り、締めくくった。
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