logo

AIやボットは本当にビジネスで使えるのか--日本マイクロソフト・澤氏が解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本マイクロソフトが9月1日に開催したカンファレンス「Microsoft Japan Partner Conference 2017 Tokyo」では、多くのハンズオンセッションが開かれた。ここでは、同社マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 兼 サイバークライムセンター 日本サテライト 責任者を務める澤円氏のセッション「AI/BOT は本当にビジネスになるのか? ~バズワードで終わらせないためのアプローチ法とは」の概要を紹介する。


日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 兼 サイバークライムセンター 日本サテライト 責任者 澤円氏

 澤氏はAI(人工知能)やボットに関するシチュエーションとして、「うちもさ、AIで何かやろうよ」「AIってさ、何でもできるんでしょ?」「ところで、どれくらい儲かるかな?」と、社長が社員に問いかける場面を紹介した。「これらはよくあるケースで、AIやボットを理解せずに万能感を期待してしまう」(澤氏)。このようなケースに直面した現場は、既存のアイディアを持ち寄って対策を立てるが、その結果生まれるものはBI(ビジネスインテリジェンス)や検索システムだった、という案件は少なくないそうだ。

 澤氏は現状を「言葉が一人歩きしている段階」と分析し、一見するとバズワード的な状態にあると指摘しつつも、「(バズワードは)市場に浸透するきっかけにすぎない」と好意的な姿勢を見せた。自身が過去に体験したケースとして、「『グループウェア』を入れると何でもできるんだろ?」といわれた案件があったという。改めて述べるまでもなく、グループウェアはメールや掲示板を統合したソリューションだが、「(日本では)紙の電子化にとどまり、ビジネスプロセスの変化に至らなかった」(澤氏)と当時を振り返った。


若き頃の澤氏。「人はここまで変われます」と聴衆の笑いを誘っていた

 そもそも、AIは1950年代から研究が始まり、1980年代にはコンピューターが自ら学ぶ、もしくは学ぶように人間がデータを与えるML(機械学習)、そして2010年以降はDL(深層学習)と歩みを進めている。Microsoftは「AIの民主化」を標榜しているが、2016年10月には、5000人規模のコンピューターサイエンティストとエンジニアを集めた「Microsoft AI and Research Group」を設立し、AIによる変革を推し進めることを内外に示した。

 同社はAI開発にあたり、「『置き換え』ではなく『拡張』」「透明性の確保」「多様性の維持」「プライバシーの保護」「説明責任の義務」「偏見の排除」の6つの原則を掲げている。「残念ながらコンピューター(技術の進歩と)戦争を切り離すのが難しい」(澤氏)からこそ、"みんな"がAI技術から恩恵を受ける公平性や民主的姿勢が重要だと澤氏は説明した。

 MicrosoftのパブリッククラウドであるMicrosoft Azureは数百のコンポーネントを備え、あらゆるシチュエーションへの適合を目指しているが、その中からAIに活用できるサービスを数多く備えているという。たとえば、すでにあるAIを利用する場合は認識サービスの「Cognitive Services」、自身で学習モデルを作るのであれば、機械学習や予測分析を行う「Machine Learning」、DLならGPUが利用可能な「Virtual Machine」を利用すればよい。今回のセッションでは、その一例としていくつかのデモンストレーションが行われた。

 まず、Cognitive Servicesでは著名人の写真をピックアップし、俳優のブラッド・ピット氏やザ・ビートルズのメンバーを即時認識した。「いわゆる顔認識だが、インターネット上のセルフィ画像とマッチングできるため、個人名を引き出すのはそれほど難しくない」(澤氏)と説明しつつ、顧客の写真を選択するだけで付随する情報を提示するサービスなどを提案。また、物体を認識させるデモンストレーションでも、顧客から商品写真を送ってもらい、チャットボット経由でスペックや付随情報を答えるカスタマーサポートなどにも応用できると澤氏は説明した。


Cognitive Servicesのデモンストレーション。PaulやJohnといったThe Beatlesのメンバーを認識した。名前の後ろに示した数値は正確率を表す

 このほかにも、感情の数値化や、Bing Speech APIのSpeech Recognition(音声認識)を用いて音声をテキスト化するデモンストレーションを行いつつ、「(感情の数値化は)カスタマーサポートに訪れた相手が和やかだった場合はポジティブに、憤慨している場合はお詫びの言葉を用意するなど、行動決定の要素に生かせる。(音声認識も)これまで手作業で行っていたテキスト化を自動化することで、素早い情報配信が可能」(澤氏)と、ビジネスシチュエーションに即した利用法を提案。その上でポイントになるのは、Cognitive Servicesの認識機能ではなく、認識結果をどのようにビジネスへ応用するか。機能とビジネスつなぎ合わせる発想が重要だと強調した。

目的を決めた上でAIやボットを道具として使う

 澤氏はAIやボットは道具であり、それ自体が目的ではないと語る。MLは学習によるモデル作成を行い、モデルにデータを適用させた結果をさらにブラッシュアップして、初めてビジネスに使える状態となる。「AIは育てないと使えない」(澤氏)のだ。そのため、「IT技術を素早く活用するには、今までのアプローチでは間に合わない」(澤氏)ことから、これまでのような社外への開発丸投げは減少し、システム内製化が進むと分析する。

 ただし、過去の常駐開発が復権することはないと同氏は話す。「AI時代だからこそ働き方も変えるべきだ。アジャイル開発以外の選択肢がない現状を踏まえると、今後は社内外といった概念すらなくなる」(澤氏)と予測した。昨今のクラウド普及は開発環境も大きく覆し、開発リソースや開発プラットフォームはすべてクラウドにある。そのため、エンジニアの居場所は重要ではなく、「どこからでも価値提供できるはず」(澤氏)と述べつつ、東京一局集中という現在の問題も解決できると語る。

 澤氏は聴講者に向けて「今がチャンス」と強調した。昨今の働き方改革やAI、ボットの価値向上など、これらを組み合わせると同時に、従来のビジネスプロセスをリセットすれば、新しい働き方を始められるチャンスだと話す。それでもAIに恐怖感を覚える人が減らないのは「(映画の)ターミネーターの功罪」(澤氏)と聴講者の笑いを誘いつつ、Microsoft Translatorを始めとする翻訳ツールを用いれば、言葉の壁もなくなると強調した。


澤氏はAI/BOTではなく、人が行うべき役割として図の3つを紹介した

 澤氏は最後に、退屈な作業はAIやボットなどのコンピューターに任せ、人は面白いことだけやればよいとコメント。「日本の底力を考えれば、いま始めれば大丈夫。トップランナーになるための準備を始めてほしい」(澤氏)と締めくくった。

-PR-企画特集