Googleは2016年11月、同社の3Dセンシングカメラ技術「Tango」がGPS以来の最もホットな技術になるとうたっていた。Tangoは物体を見るだけで、それを計測することができる。
Tangoの製品担当ディレクターを務めるNikhil Chandhok氏は、Tangoは単なる実験的取り組みではないことを強調し、2017年には「非常に多くのスマートフォンメーカー」がTango対応スマートフォンを製造するだろう、と語っていた。
ところが、ふたを開けてみると、Tangoは実験に終わってしまった。Googleは今、Tangoに終止符を打とうとしている。Appleが事実上Tangoと同じことを、よりうまく、安価に行う方法を考え出したからだ(詳細については、この記事を参照してほしい)。
そこで今回、Googleは、以前のように根気強くメーカー各社を説得して、独自の専用アプリを搭載し、分厚くてバッテリを大量に消費するTangoスマートフォンを作ってもらおうと試みるのではなく、早めにTangoに見切りをつけて戦略を転換し、事実上Appleと全く同じやり方を採用しようとしている。
Appleには「ARKit」がある。一方、Googleは「ARCore」を発表した。いずれも、既存のスマートフォンの単一のカメラを使って、周囲の環境を検知し、現実世界に対するスマートフォンの動きを追跡する機能を開発者に提供する。どちらも床やテーブルなど、近くの平面を検知することで、ユーザーがバーチャルな物体をそれらの表面に「ピン留め」することを可能にする。これらの物体は、スマートフォンのスクリーンを通してのみ、見ることができる。
ARKitとARCoreはいずれもバーチャルな物体の照明を調節し、現実世界に違和感なく溶け込むようにする。例えば、「ポケモン」が目の前に立っている場合、その影は適当に重ねて表示されるのではなく、全て正しい向きで表示される。
また、どちらも現在は開発者向けで、今後対象を消費者にも拡大する予定だ。いずれもそれらの開発者に対して、「Pokemon GO」風の拡張現実(AR)アプリを簡単に開発できる手段を提供すると約束している。そうしたアプリは理論上、既存の無数のスマートフォンで動作し、通常のアプリストアで提供することが可能だ。
Googleは盲目ではない。確かに、同社は今回の動きが独自のアイデアであるかのような印象を与えようとしている(Googleは米CNETに対し、Tangoを使わないARにしばらく前から取り組んできたと述べたが、われわれが具体的な期間を尋ねると、言葉を濁した)。しかし、GoogleのAR/VR責任者であるClay Bavor氏は、Appleとの類似点があることを認めただけでなく、それらが意図的なものであることもほのめかした。
Bavor氏はわれわれに対して、次のように語ってくれた。「私は『初めて』であることにそれほどこだわりはない。私が関心を持っているのは、Androidに素晴らしいものを提供すること、そして、デバイスがそれをサポートする能力を備えることだ。比較できる点は非常に多い。ARCore向けに何かを構築した経験のある開発者は、それをARKitに移植するのも非常に簡単だと感じると思う。逆の場合も同様だ」
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