オフィス環境に見る企業価値の向上--CRE戦略とWeWorkの意外な共通点

赤木正幸(リマールエステート)2017年08月28日 12時36分

 不動産テックビジネス研究会は8月17日、第3回研究会「不動産×ITディスカッション」を開催した。コワーキングスペースを提供するスタートアップ企業「WeWork」と事務所、店舗、工場、福利厚生施設など企業が利活用している不動産を戦略的に扱う「CRE(Corporate Real Estate=企業不動産)」戦略の、意外かつ極めて重要な共通点などについてトークセッションした。

 不動産テックビジネス研究会は、デジタルハリウッド大学大学院「サイバーファイナンスラボ・プロジェクト」内に設置された研究会。不動産テック企業、リマールエステートの代表取締役社長CEO赤木正幸が代表を務める。

不動産テックビジネス研究会
 今回の研究会は、写真右から、赤木、尹氏、ゲスト講義を行った百嶋氏(ニッセイ基礎研究所)、鈴木氏(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)、藤田氏(リコーリース)、伊藤氏、写真外に茂木氏、小山氏(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)、高橋氏(リマールエステート)らが参加した。

 研究会メンバーは、赤木のほか、シーエムディーラボ 代表取締役社長、デジタルハリウッド大学大学院 特任教授の尹煕元氏(ファイナンス・AI・仮想通貨・ブロックチェーン)、Gash fara代表取締役社長の茂木健一氏(ブロックチェーン・ドローン)、日本マイクロソフトエバンジェリストの増渕大輔氏(AI・ブロックチェーン)、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士、FinTech協会分科会事務局長の落合孝文氏(法律・ファイナンス)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士の伊藤多嘉彦氏(法律・不動産)らが参加している。

 すでに6月と7月に研究会を開いており、ブロックチェーン、仮想通貨、AI、ビックデータなどのIT技術や、法律、不動産、金融等の専門家を中心にディスカッションを重ねている。「不動産の現状課題をひもとき、不動産テックで解決する」ことをテーマに、研究だけでなく、具体的なビジネスプロトタイプ開発を目指す。

 6月開催の第1回研究会では、(1)不動産情報等がブロックチェーンに登録される際の「正しさ」の問題、(2)仮想通貨を用いた不動産取引の実現方法――の2つを重要なテーマとして認識。

 (1)の「正しさ」については、「登記・取引情報がブロックチェーンで記録・保管されても、登録時の管理者が不要となるわけではない」、「制度やシステムの提案・設計をするには論点整理が必要」とし、(2)の実現方法については、「仮想通貨流通量と不動産価格のバランス問題を回避する手法の構築が必要」、「クラウドファンディング等との連携と関連法制度等の整理が必要」との指摘があった。

 特に、最初に登録される情報の正しさがブロックチェーンでは担保できないとする指摘は、ともすれば見落とされがちな課題であり、改ざんが困難であるブロックチェーンの盲点となっている。

 7月開催の第2回研究会では、「不動産の小口化とブロックチェーン」についての議論を深めた。

 不動産小口化の課題である、(1)セカンダリーマーケットの不在、(2)流動性の欠如、(3)運営者の不確実性――を克服する方法として、「不動産議決権付き仮想通貨」での不動産売買によって、不動産権利と議決権を付けたブロックチェーンで民主的に不動産を管理する方法の提案があった。

 しかし、提案内容の実現を目指すと、金商法等の厳しい法規制やライセンスの壁があり、相当な「大義名分」がなければクリアは困難であるという意見が出た。ここで、「不動産の現状課題をひもとき、不動産テックで解決する」という原点を再確認し、不動産の専門家の講義を受けた上で、今回の不動産×ITディスカッションを迎えた。

クリエイティブオフィスの構築・運用が極めて重要なCRE戦略になる

 不動産×ITディスカッションでは、ニッセイ基礎研究所社会研究部上席研究員の百嶋徹氏が、CREの現状について講義した。百嶋氏は、野村総合研究所在籍時に証券アナリストランキング素材産業部門で1位にもなった企業経営研究の専門家。CREも経営戦略の視点から研究しており、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)のCREマネジメント研究部会委員にも就任している。

 百嶋氏は、「企業が事業継続のために使う企業が事業継続のために使う不動産(CRE)を重要な経営資源の1つに位置付け、活用、管理、取引(取得、売却、賃貸借)に際し、CSR(企業の社会的責任)を踏まえた上で、企業価値最大化の視点から最適な選択を行う経営戦略」とCRE戦略を定義する。

 「CREは合理的な企業にとっては目新しい概念ではなく定石的な経営戦略。CRE戦略は不動産だけの部分最適ではなく、経営資源の全体最適化のなかで決定しなければならない。経営層や事業部門など『社内顧客』に不動産サービスを提供するシェアードサービス機能を担うとの発想が、CRE戦略には不可欠である」(百嶋氏)とし、「CREは事業に供している不動産、すなわち事業用不動産を指し、売却や賃貸への転用はCREの出口戦略と捉えるべきだ」と強調した。

 CRE戦略を実践する海外先進企業は、Apple、Cisco Systems、Google、GlaxoSmithKline、IBM、Intel、Microsoft、P&Gなど。百嶋氏によれば、各社に共通する特徴は、(1)CREマネジメントの一元化、(2)アウトソーシングの戦略的活用、(3)ワークプレイス戦略の重視――という3点であり、百嶋氏は、これらをCRE戦略を実践するための「三種の神器」と呼んでいる。

 百嶋氏は三種の神器をより詳細に、(1)専門部署の設置による意思決定の一元化とIT活用による不動産情報の一元管理により、CREマネジメントを一元化していること、(2)外部ベンダーを効果的に活用することにより、専門部署では社内スタッフの少数精鋭化を進め、戦略の策定・意思決定やベンダーマネジメントといった戦略的業務に特化する傾向を強めていること、(3)CRE戦略の重点を単なるハードの不動産管理にとどまらず、先進的・創造的なワークプレイスやワークスタイルを活用した人的資源管理(HRM)に移行させていること――と説明した。

 また、「『クリエイティブオフィス』の構築・運用は、イノベーション促進を通じて成長戦略につながり得るCRE戦略である」(百嶋氏)と強調。「オフィス空間の意義は、人との直接のコミュニケーションとコラボレーションを通じて画期的なアイデアやイノベーションが生まれること」とし、「創造的なオフィスづくりには、効率性のみの追求ではなく、経営資源の余裕部分を指す『組織スラック(slack)』へ投資する発想が不可欠であり、柔軟で裁量的なワークスタイルへの変革とセットで推進することが、極めて重要である」と締めくくった。

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