最近日本でもLinkedInなどを通じてさかんに人材を募集しているコワーキングスペース最大手のWeWork。2017年春にはソフトバンクグループが同社に3億ドルを投資したというニュースも流れていた。
同社は、いわゆるシェアリングエコノミーの流れにうまく乗って台頭してきた事業者の1つだ。Uber(ライドシェアリング)、Airbnb(民泊仲介サービス)などと同列に語られるのを目にした覚えがあるが、正直なところ、リスクもそれなりに伴う不動産業(場所貸し)に、どうしてそれほど高い評価額がつくのか、よく分からなかった。今回はそうした疑問を解くヒントになる下記の記事から、目に留まった点をいくつか紹介したい。
WeWorkのニューヨーク本社を取材したライフハッカー[日本版]の記事には、利用者の視点から見た同社サービスの魅力(目に見える物理的な長所など)の紹介とともに、次のような指摘がある。
(略)それに加えて、ユーザー同士がつながりやすい工夫が随所に感じられたことも特筆しておきたい点です。
たとえば、オープンスペースでアフター5の交流イベントや啓蒙イベントが頻繁に行われ、そこで他社の人と知り合いになることも多々ありました。また、WeWorkの専用アプリを通して、メンバー同士が気軽につながれたことも、気に入った理由の1つです。(略)
上述のBackchannelの記事では、この無形の価値の部分に関して、比較的詳しい実例が紹介されている。ワシントンD.C.のWeWorkを利用するBrllntというベンチャーが、パートナーとなる他の事業者(ベンチャー企業や自営業者)をこの空間内で見つけ、クライアントの半分近くをWeWorkでの新たな出会いを通じて獲得したという話などが出ている。いい意味での「仕事のための出会い系サイト」といったところだろうか。
なお、WeWorkの利用者は2017年1月の時点で全世界に8万人以上、拠点の数も32都市に112カ所とこの記事にはある(今ではもう少し増えているかもしれない)。
ひとつ面白いのは、WeWorkの各拠点にいるコミュニティ・マネージャ(Community Manager)という人たちが、こうした出会いを積極的に仲介していて、利用者からの相談に乗ったり、人探しを手伝ったりしている、というところ。同社はそのための専用ソーシャルネットワークも保有している。つまり、約8万人分の人材に関するデータがすでに同社の手元に集まっていると解釈できる。同記事では、この点について、LinkedInと重複する部分があるとした上で、利用者が求める相手が身近に見つかり、簡単に相対で話せるWeWorkの方が、登録者の数で勝るLinkedInより有利であるとも指摘する。
シェアリングエコノミーあるいはギグエコノミー(gig economy)などと呼ばれる昨今の流れに照らして考えると、Uberが利用を効率化するリソースはドライバーとその自家用車、Airbnbが効率化するのは個人宅(マンションや一軒家)であり、それに対して、WeWorkが効率化するリソースは労働力、それも一定の技能を身につけた専門職の労働力、という見方も成り立つ。
なお、ベンチャー企業といえば「オフィスとなるガレージや地下室を確保して……」というのが長い間の相場だった。だが、WeWorkのような場が登場した今では、顧客やパートナーを見つけやすいコワーキングスペースを利用する方が、ガレージなどで孤軍奮闘するよりも、うまくいく可能性が高いと同記事は指摘する。
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