オランダ南部に位置し、屈指の工業都市であるアイントホーフェン。もともと自動車産業や電気産業が盛んな都市で、トラックメーカーのDAF、電気メーカーのフィリップスなどが本社を置いていた。
2001年にフィリップスがアムステルダムに本社を移し、敷地をハイテク・キャンパス・アイントホーフェン(HTC)として開放。2004年、オランダ政府はHTCを含むブレインポート地区を設置し、公的資金を組み合わせて持続可能で未来のテクノロジを着想できる集約地として力を注いできた。
2011年にNPOのシンクタンクであるインテリジェント・コミュニティ・フォーラム(ICF)から「インテリジェント・コミュニティ・オブ・ザ・イヤー」に、2013年には米誌「フォーブス」から「世界一の発明都市」に選ばれた。今や空の港(エアポート)のアムステルダム、海の港(シーポート)のロッテルダムに続く頭脳の港(ブレーンポート)のアイントホーフェンとして、オランダ経済を担うまでに成長している。
そんなアイントホーフェンに基盤を置く車を専門としてソリューションを提供しているアントレプレナーのAmber Mobilityが、2017年4月15日に画期的な発表をして、世界から注目を浴びた。それは、アイントホーフェンが大規模な自動運転車を導入する世界初の市になるというものである。
Amber Mobilityの車に対するアプローチは従来の自動車関連の企業とは大きく異なる。それは、“所有ではなくシェアする車”を掲げていることである。
「なぜ私たちは1日1時間しか使わず、残りの23時間は置いているだけの車を所有する必要があるのか」という問いを投げかけ、CO2排出による環境負担、交通渋滞、駐車場などの社会問題、金銭的負担を軽減するための車のシステムや開発に力を注いでいる。
アイントホーフェン工科大学出身で、Amber Mobilityの若きCEOであるSteven Nelemans氏は語る。「車を所有するのは、行きたい時間に行きたい場所に行ける、すなわち自由を手に入れることだ。そのために費やすコスト、環境負荷をもってしても自由には代えられない。私たちは車を所有するよりも効率的で便利で、値段も手頃な車を提供したいと思っている。それを実現するには、人びとが常時車にアクセスできる自動運転車が必要だ」
開発パートナーには、ナビゲーションソフトウェア開発会社TomTom、通信会社の大手KPN、オランダ応用化学研究機構TNO、半導体メーカーNVIDIA、マイクロソフト社らが名を連ねる。
TomTomが地図のプロバイダ、KPNがロケーション決定やデータ通信などのネットワーク、TNOが自動運転ソフトウェアの搭載、センサやカメラをテストする。カメラやセンサから送られてくるデータの画像処理ハードウェアを請け負うのはNVIDIAである。マイクロソフトはクラウドプラットフォームの「Microsoft Azure」を提供する。
Amber Mobilityによると、車に乗客がいるときには自動運転はせず、夜間バスレーンを利用して、翌朝、客が必要なピックアップポイントまで自動運転で走行するという。技術面だけではなく、交通法など越えなくてはならない壁も高く、夜間も無人ではなく、有人で行う。当面はビジネスユースに限るが、2019年頃には個人ユーザーもこのサービスを使えるようにしたいとAmber Mobilityは語る。
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