働き方改革の本質は労働時間の短縮ではない--三井不動産に聞くオフィスのあり方 - (page 2)

重要なのは、普通のビジネスパーソンが最適な働き方を作り実践していくこと

--働き方やオフィスの在り方をリデザインする上ではさまざまな議論があったと思いますが、どのような意見が挙がりましたか。

川路氏:このWORKSTYLINGは法人契約なのですが、この難しいところは施設を利用するのは事業を推進する現場の社員の方であっても、契約するのは人事・総務といった管理部門の社員の方であるという点。打ち出すメッセージはどちらに向けたものにするのかは、議論になりましたね。

三浦氏:頭を悩ませましたね。ついエッジの効いたメッセージを打ち出したくなるのですが、川路さんは「いや、そうじゃない。使う人には響くメッセージかもしれないが、実際に契約を決定するコスト意識の高い会社の総務部門の方にも理解してもらわないといけない」と指摘されるわけです。使う人は先進的だが、契約する人は現実的という構造の中で、リスクを精査しつつどちらの立場にとっても、ビジネスをドライブさせられるメッセージをどう打ち出すのかは議論しましたね。

川路氏:加えて、働き方改革の本質は何かについては徹底して議論していましたね。私たちは、実はオンとオフは区分けするものではなく、いつもオンの状態だということを言いたいのです。いま、働き方改革の議論では長時間労働の改善が大きなトピックスになっていますが、あれは「早くスイッチを切ってオフにするべき」という話ですよね。課題の本質は労働時間ではないと思っていますが、それをどこまで伝えるべきかが大きな議論になりました。

三浦氏:いま行われている働き方改革の議論は、端的に言えば「早く仕事を終わらせて帰る」「残業しない」という“公私分離”だと思うのですが、私たちが考える働き方改革は、プライベートの中で生まれた気付きや出会いを仕事にも活かしていく“公私統合”だと思うのです。例えば、土日に参加したイベントから新しい仕事につながる出会いが生まれたり、友人との意見交換から仕事のヒントが手に入ったり、どこまでが仕事でどこまでが遊びかなんてわからないわけです。ただ、このような考え方はまだレアケースで、働き方改革の先にあるものかもしれません。WORKSTYLINGとしては先進事例だけでは世の中は変わらないという考えのもと、普通のビジネスパーソンが変わるという点にこだわって設計しています。

川路氏:働き方改革のイノベーターはすでに多くいるのです。スタートアップの界隈や、フリーランスの方々の中には、イノベーティブな働き方を実践している方もたくさんいらっしゃる。しかし、その“後追い”をしてもいけないとも思うのです。

三浦氏:WORKSTYLINGが法人契約である点も狙いはそこにある。先進的なクリエーターのためのコワーキングスペースは世の中にたくさんあります。しかしWORKSTYLINGは、そことは違う方向を目指しています。普通の会社のオフィスで働く普通のビジネスパーソンが自分にとって最適な働き方を考えて、実践していける環境を作ることが、日本の新しいワークスタイルをデザインすることになるのです。WORKSTYLINGというネーミングには、働く人に向けた“あなたの働き方をデザインしよう”というメッセージでもあり、企業に向けた“新しい働き方のルールをデザインしよう”というメッセージでもあるのです。


働き方改革の在り方について語る三浦氏

--労働時間を削減してオンとオフを分ける“公私分離”の考え方には私も違和感を覚えますね。実際、仕事で忙しくても幸せな人はたくさんいる。“働く時間を減らしなさい”と言われて納得感を得られない人も多いのではないでしょうか。自分が充実した人生を送れているかという点に焦点が当たるべきであって、働き方改革は単なる時間の問題ではないような気もします。

三浦氏:例えば会社によっては「20時以降は退社」というルールを設けるところもありますが、実際には20時以降も働きたい人はいるはず。それでも毎日が充実していると感じる人は多いわけです。働き方の問題の本質は“自分が主体的に働けているか”ということです。上司や組織から言われるがままに仕事をして“自分が何のために働いているのかわからない”状態に陥ってしまうのは、労働時間に関係なく誰だって辛いと思います。働き方改革は労働時間の問題もさることながら、労働の主体性の問題として捉えないといけないのではないでしょうか。

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