これは、どんなカップルの間にも起きうることだ。それを何度も目にしてきた。結婚して10年後、あるいは20年後に起きがちだ。2人の心が離れていく。もう共通の関心事がなくなり、辛うじて2人をつないでいた子どもたちは巣立ってしまった。
ある有名カップルが離婚の危機にある。それは、MicrosoftとIntelだ。
「Wintel」とも呼ばれる両社の提携関係は30年以上続いており、テクノロジ産業の基盤を固めた「パワーカップル」と言える。
この2社のパートナー関係ほど浸透し、影響力を持つ関係はテクノロジ業界には他にない。おそらく、どの業界にもないだろう。
Intelはx86プロセッサのアーキテクチャと進化によってWindowsの成長を促し、Windowsの進化がIntelプロセッサの成長を促した。2社の関係では、どちらがより重要か判断するのは非常に難しい。いろいろな意味で、両社の関係は対等だ。
だが今、MicrosoftはARMアーキテクチャを採用するQualcommのプロセッサを搭載したPCを作ろうとしている。
当然、Intelは懸念しているだろう。具体的にMicrosoftの名を挙げていないものの、Intelは、過去に知的財産権が脅かされた時には法的手段をとったことや、もし同じことがあれば再び法的手段をとるつもりであることを示唆している。
Microsoftが別のCPUに目移りするのはこれが初めてではない。Intelはこれまで、Microsoftが浮気しても見て見ぬふりをしてきた。それらは両社の関係にとって、本当の危機ではなかったからだ。
1990年代、「Windows NT」は複数のCPUアーキテクチャに対応するOSとして開発された。同OSはMIPS、PowerPC、DEC Alpha、そしてもちろん、IntelのItaniumでも稼働した。
Microsoftは、「Windows CE」と、ついにはNTカーネルで稼働する「Windows 10 Mobile」をARMに移植した。
だが、これら2つのケースでは、Intelは積極的に取り組みに参加した。IntelはWindowsを移植可能にすることに強い関心を持っていた。StrongARM/XScaleとItaniumで、同社は自らの未来に投資していたからだ。
言ってみれば、「結婚生活」へのちょっとした刺激のようなものだった。
Intel以外の参加企業は特に脅威ではなかった。他社のプラットフォームでアプリを稼働させるには、再コンパイルする必要があったからだ。そんなわけで、PC業界はx86システム向けに最適化されたソフトウェアに制覇された。
数年前、デスクトップスタイルのWindowsが、NVIDIAのTegra搭載タブレット「Surface RT」向けにARMに移植された。このWindowsはメモリに制約があり反応が鈍く、また、動くアプリは「Windows Store」にあるものと、Win32版を再コンパイルしてプリインストールされたOfficeだけだった。
この時も、Intelは心配する必要がなかった。「Windows RT」とSurface RTは市場に受け入れられなかった。MicrosoftはWindows RTを棚上げにしてx86ベースのSurface端末の開発を続け、Windowsのタッチ対応を強化し、開発ツールを改善するといった取り組みを続けた。
あっという間に4年経ち、Microsoftは再びWindowsを移植性の高いものにしようとしている。ARMベースのWindowsシステムだけでなく「Azure」クラウドを構築する可能性について、Qualcommにアプローチしている。
ARMのSoCは今やかなり性能が高い。64ビットアプリケーションを動かせるし、多くのメモリを扱え、多数のプロセッサコアを使える。ついにデスクトッププロセッサ並みの性能に近づいたのだ。
Appleが米国時間6月5日に発売した最新世代の「iPad Pro」を見てみよう。これは64ビット、6コアのSoC「A10X」を搭載している。
Intelとの差を車に例えると、Chevrolet CamaroのV6エンジン搭載モデル対2.0リッター直列4気筒直噴ターボモデル、といったところだ。
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