2020年に向けて大きな踏み込みを見せた印象なのが「インターネット活用技術」。一部民放局などと協力して開発を進めてきたスマートフォン向け共通コンパニオンアプリ「Hybridcast Connect」を活用した行動連携サービスの提案は、放送サービスの未来性を感じさせるユニークな内容に仕上がっていた。
Hybridcast Connectは、テレビとスマホ、さらにその外側となるIoTデバイスなどとつなげるための基盤となるアプリのこと。テレビメーカーやスマホメーカー、キャリアなどの垣根を越えて行動連携サービスを実現する上で必須な仕組みとして現在、仕様を含めた検討が進められている。
その基盤アプリを活用してNHKが示したのは、自動車運転と連携させた事例。ユーザーの番組視聴情報をスマホへと送り、そこからカーナビなどと連携させる仕組みだ。
例えば、ユーザーが大河ドラマ「おんな城主 直虎」を視聴した後にドライブに出かけた場合、ドラマゆかりの地の近くを通った際にそれを示すアイコンが自動車側に表示される、といった具合。さらにスマホ側に表示されるメニューをタップすれば、そこを目的地とした案内情報がカーナビに送られる。
シャープの音声対話冷蔵庫との連携事例では、冷蔵庫の持つ在庫管理機能を活かし、「今日の料理」の放送に合わせて「その材料が冷蔵庫にあるか否か」をスマホが判定。仮に材料が入っていない場合は、そのままネットショッピング画面へと飛んで購入できるイメージを提案していた。
民放各局の行動事例案は、各局の「色」を出した提案が多く見られた。
テレビ朝日の展示は、アニメ「ドラえもん」放映にあわせて家庭のおもちゃを動かすという提案。用意した等身大(?)ドラえもんのおもちゃのタケコプターがくるくると回転したり、展開にあわせて「ムード盛り上げ楽団」が演奏したりといったサービスだ。
フジテレビは「ドラゴンボール」。某人気スマホゲーム同様、ARで各地に配置したドラゴンボールを、スマホ上に表示されるレーダーを頼りに集めると、番組放送中に実施するゲームで利用できるポイントへと変換される。なお、展示ブース近くに1つ、ドラゴンボールが配置されているため、現地でARを体験することも可能だ。
TBSテレビはCMと連携した事例を提案。テレビCMを一定時間視聴するとスマホがポイントを獲得し、そのスマホを持って外出すると、店舗が近づいたときにポップアップで案内してくれるという内容だ。展示では「ケンタッキーフライドチキン」などの協力を得てデモをしており、リアルなサービス事例として理解しやすい。
☆TBSテレビのCM連携事例。ゲットしたポイントを元に、実際の店舗で利用できるイメージ☆東京ローカル放送局の東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)は、通販番組放送中、通販会社のオペレーターとテレビ画面を使って直接やりとりできるという大胆なサービスを提示。放送中にスマホでオペレーターとつなぎつつ、テレビ画面にもユーザー固有の商品情報や確認した個人情報(名前・住所など)を表示させるという内容で、スマホ操作に不慣れなユーザーでもテレビ画面を通じて安心してやりとりができるというものだ。
いずれのサービスも、Hybridcast Connectを活用したテレビ、スマホの連携事例だが、従来から期待されていた「セカンドスクリーン」的な活用方法に留まらず、むしろスマホを起点としてIoT連携を図ったり外出先行動とつなげたりといった事例が目立つなど、放送局における「スマホ活用の位置づけ」の変化も感じられる内容となっていた。
このほか、より未来の放送技術として「インテグラル立体テレビの要素技術」や「高色純度有機ELデバイス」などの展示も、一定の進歩を感じさせる内容。放送技術研究の最先端を実際に確認できる貴重な機会、ご興味のある方はぜひ、現地に足をお運びいただきたい。
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