5月26~29日に開催されているNHK放送技術研究所「技研公開2016」。進化が続く放送技術を体感できる27項目の研究開発成果が展示され、初日から多くの来場者を集めている。2016年は「スーパーハイビジョン」「インターネット活用技術」「立体テレビ」の3つを重点項目として挙げ、加えて人にやさしい放送技術を目指した「スマートプロダクション」、放送機器の高度化に向けた「次世代デバイス」の展示にも力を入れた形だ。
特に1階エントランスホールは、掲げた重点項目の最新動向がわかりやすく展示されており、ここをぐるりと見て回ることで「放送技術の現在と未来」がある程度見えてくる。なかでも8Kスーパーハイビジョン関連は近年のNHK技研最大のテーマだが、今回の目玉は大画面シート型ディスプレイの試作品展示だ。
130型の超薄型8K有機ELディスプレイ(今回は4Kパネル×4枚を貼り合わせた形)が、この完成度で展示されたことに驚く方が多いのではないだろうか。その驚異的な薄さ、サイズ、そして画質は、各種展示の中で最も目をひかれる出色の出来栄えだ。
なお現時点では、将来的に目指しているという「くるくる丸めることができる」部分にまでは至っていないが、壁一面の薄くて軽いディスプレイ、という8Kを日本の家庭で楽しむ上で欠かせない要素をクリアしたこの展示には、一見の価値があるだろう。
恒例の「8Kスーパーハイビジョンシアター」(技研講堂)は、「スポーツイベントとともに進化してきた8Kスーパーハイビジョン」をテーマに、2012年の「ロンドンオリンピック」や2014年のFIFAワールドカップブラジル大会」、「ウィンブルドン選手権」など、大規模なスポーツイベントを8K映像でまとめたダイジェスト版が上映されている。
時間にして11分程度のコンテンツではあるが、迫力あるスポーツコンテンツの魅力が楽しめる内容だ。試験放送開始後となる8月の「リオデジャネイロオリンピック」を前に、8Kによるスポーツ中継の魅力を体感しておくのもいいかもしれない。
やや制作寄りの展示に目を移すと、地下1階(A-1)の展示「8K HDRライブ制作」も注目の展示だ。表現できる明暗の幅を広げるHDR(高ダイナミックレンジ)は昨今の映像業界で話題のキーワードだが、それを8Kで、かつライブ制作で用いると、どのような映像が制作できるのかが確認できるデモ展示だ。
そのほか、かなりデバイス寄りなところで「アーカイブ用ホログラムメモリー」(A-4)も注目度が高い。現状、衛星放送などで一部サービスがはじまっている4K映像にも言えることだが、データ量が多い高画質映像に関する長期保存の在り方には議論が必要とされている。
今回はデバイスに加え、再生データの品質向上技術を組み込んだホログラムメモリードライブ、ディスク媒体に記録した8K圧縮信号を再生した映像を展示。アーカイブメディアの進化状況がうかがえる内容となっている。
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