Apple Ginzaには、目に障害を持つスタッフがいる。視野が95%欠けている状態でiPhoneやApple Watchを使っているという。今回のセッションでは、リアルな利用者としてさまざまなことを教えてくれた。
視覚障害を持つ人が、うっかりiPhoneを床に落としてしまうと、どこにあるかすぐに分からず大変なことがある。そんなときに役立つのがApple Watchを操作し、iPhoneから音を出すことでiPhoneを探せる機能だ。
Apple Watchの画面を下から上へスワイプすると「コントロールセンター」が起動する。バッテリの残量の確認や機内モード、消音といった設定を簡単に行える。
その中にあるiPhoneマークをタップするとiPhoneがある場所を音で知らせてくれる。ちなみに、長押しするとiPhoneのフラッシュライトを光らせながら同様の音が鳴る。
なお、自宅の1階と2階など、同じWi-Fiネットワークにいるときは、Bluetoothがつながらない距離でも使える。
視覚障害者の中には、風呂から上がるときに家族に知らせたり、なにか家で困ったことがあったときの手段としてこの機能を使っている人もいるという。使い方次第で、iPhoneが子機のようにもなる。
なお、iPhoneとApple Watchが離れているときは、文字版の上に赤いアイコンが表示され「接続されていません」と言われて探せなくなる。逆に言えば、オフィスや店の外に出てこのアイコンが表示されていたら、iPhoneはバッグの中にしまったのではなく、オフィスや店の中に置き忘れてきたと気づける。筆者も自宅や外出先でよく使用する機能だ。
Apple Watchのサイドボタンを長押しすると、「電源オフ」と並んで「緊急SOS」(メディカルIDを設定していれば3つ)が表示される。緊急時の番号がとっさに浮かばなくても、緊急電話をかけられる。日本では、「警察」「海上保安庁」「火事、救急車、救急」の3つが初期設定で表示され、それらをタップするとかけられるしくみ。
また、サイドボタンをそのまま押し続けるとカウントダウンが始まり、警告音が鳴り自動的に緊急通報用番号にかかかるという。
iPhoneの「ヘルスケア」アプリで「メディカルID」を作成すると、緊急連絡先を設定できる。緊急SOSを利用したときに、家族などを設定した相手に利用したというメッセージが通知されるという。
このほか、iPhoneアプリで便利なものの一つが、カメラで映した被写体の名前がわかる「Aipoly Vision」という。テキストの読み上げ機能などは有料。
視覚障害者にとって、食事のとき、口に入れるまでなにか分からないのは怖いことだ。このアプリを使うと、何があるかを読み上げてくれる。目の前のお皿に何が入っているかを確認するときに便利だという。
試しにMacBookを何度か撮影してみると、「ノートパソコン」「ノートパソコンあるいはエンベロープ(封筒)」と表示された。形から推測するものとしては、意外と正しい判断なのではないかと感じる。
今回は、主にセッションで紹介された機能やアプリの使い方を紹介してきたが、まださまざまな使い方があるという。Apple Watchは、主に通知ツールとして受け身で使用している人が多いかもしれない。しかし、実は使い方によっては生活をサポートする強力なツールとして利用できるのだ。
視覚障害者の方が語った「小さい世界でいろいろなことができ、iPhoneを子機のように使える。使ってみたらiPhone持つより人生変わるかな、というぐらい安全になった」と言葉が印象的だった。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)