クラウドソーシングサービス「Lancers」を運営するランサーズは4月19日、新たな成長戦略である「Open Talent Platform(オープン・タレント・プラットフォーム)」構想を発表した。従来の主力事業であるクラウドソーシングに加えて、個人間のスキルシェアリングサービスや、企業マーケティング支援の新会社など、複数の新事業を展開することでさらなる成長を目指す。
ランサーズ代表取締役社長の秋好陽介氏によれば、2015年は913万人だったフリーランス人口は、2016年には約200万人増の1122万人に達しているという。また、同社はこれまで売上高を公表してこなかったが、2016年は21億円だったことを明らかにした。2013年は3億円だったため、3年間で約7倍に成長したことになる。
主力事業の成長を受けて同社では、スキルを持った個人(=タレント)の働き方の可能性を広げ、効率的に最適な仕事とのマッチングを実現するオープン・タレント・プラットフォーム構想を発表。これにあわせて、「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会を作る」という新ビジョンを掲げ、コーポレートロゴも一新した。
新戦略の実現に向けて、同社では3つの新事業を打ち出した。1つ目が、秋好氏が2008年の創業時から「9年間ずっとやりたかった」という、個人間でスキルを売買できるシェアリングサービス「pook(プック)」だ。6月にベータ版を開始する予定で、4月19日から事前登録を始める。
pookは、ヨガインストラクターやネイリスト、料理代行などのスキルをもつ個人と、それらのサービスを受けたい個人をつなぎ、決済までを完結できるサービス。ユーザーは「家でヨガレッスンを受けたい」「パーティの買い出しを手伝ってほしい」といった依頼内容と、日時や場所、予算を登録し、サービス提供者は空き時間にそれらの依頼を引き受ける。料金はユーザーごとに設定でき、当初の決済手数料は無料。まずは10カテゴリ、74種類の仕事を登録できるようにする。
実際に個人同士が会うサービスであるため、サービス提供者と受け手の双方の本人確認をするほか、サービス提供者のスキルレベルを審査する。また、チャット機能を備えたり、配車サービス「Uber」のようにサービス提供者の現在地を地図上でリアルタイムに確認できるようにすることで、「会えない、来ない」といったトラブルも防げるとしている。同性しかマッチングしない機能なども設ける予定。まずは、渋谷区、目黒区、港区で開始するという。
スキルシェアの領域では、すでに「ココナラ」や「エニタイムズ」などの先行サービスがあり、pookは後発といえるが勝ち目はあるのか。この点について秋好氏は、「皆さんの中で、(スキルシェアサービスを)使ったことがある人は恐らくほとんどいない。どのサービスもまだまだチャレンジングな状況。我々はクラウドソーシングを9年やってきたことで、企業の要件と個人を結びつけるためのノウハウがあり、これをスマホベースのシェアリングサービスにも生かせる。位置情報ベースも含めて、機能的な差別化もしたい」と自信を見せた。
2つ目の新事業が、夏にローンチを予定している、トップレベルの専門スキルをもつエンジニアを中心としたフリーランスに仕事を依頼できるサービス「Lancers Top」だ。高単価の案件に絞って受注したいフリーランスと、最低報酬額を設定した非公開求人案件をマッチングさせる。スキル審査や面談などを通過した、上位5%のエンジニアやクリエイターを揃える予定で、「年収800万円以上のフリーランスが目安になる」(秋好氏)。なお、既存のLancersユーザー以外でも登録できる。
3つ目が、デジタルマーケティングの新会社「QUANT」の設立だ。同社ではこれまで、法人向けサービス「Lancers for Business」を通じて、クラウドソーシングを活用した企業のマーケティング支援をしてきた。これまでに2億以上のユーザーと1000万以上のコンテンツを分析しているという。同サービスは案件の単価も高く、同社の収益の柱となりえることから、より事業を加速するために分社化を決めたという。
新会社では、コンテンツマーケティング&クリエイターマネジメントシステム「Quant」をクライアント企業に提供。利用企業は、クリエイターやフリーランスの職務経歴や資格のほか、過去に執筆した記事や、その記事の読了率、SNSでのシェア数などを把握できる。また、クライアントのマーケティング活動を支える体制をクラウドソーシングによって構築し、制作や運用、改善提案をアウトソーシングするとしている。
さらにランサーズでは、4月から京都大学とともに産学共同研究を開始。上記の新事業などで蓄積される幅広いデータをAIによって解析し、スキルや仕事のマッチング精度の向上を目指すという。
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