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EC需要に苦しむヤマト運輸、デジタルで「再配達」減らす

藤井涼 (編集部)2017年03月30日 11時30分
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 ECサイトやフリマアプリが急成長を遂げる一方で、そのしわ寄せを受けているのが物流業者だ。ドライバー不足の中、増え続ける物量に悲鳴を上げた業界最大手のヤマト運輸は3月17日、昼(12~14時)の時間帯指定を廃止することを発表。また、当日の再配達依頼の受付け締切り時刻も、1時間近く短縮することを決めた。秋には27年ぶりに宅配料金を値上げする予定だ。

ヤマト運輸のネットワーク戦略部 プロジェクトマネージャーである畠山和生氏(左)と同社 営業推進部 係長の荒川菜津美氏(右)
ヤマト運輸のネットワーク戦略部 プロジェクトマネージャーである畠山和生氏(左)と同社 営業推進部 係長の荒川菜津美氏(右)

 宅配ドライバーを苦しめているのが荷物の「再配達」。国土交通省が2015年に実施した調査によると、配達する荷物の約2割が再配達とされているが、ヤマト運輸のネットワーク戦略部 プロジェクトマネージャーである畠山和生氏によれば、「ECなどの荷物の再配達率はさらに高い」のが実情だという。

 「共働きのため日中に荷物を受け取れない」「ECで時間指定をせずに注文したため、荷物が届くタイミングが分からない」など、再配達の要因はさまざまだ。中には、「荷物が届く時間を把握していたが用事があるため外出した」「自宅にいても居留守を使い、不在票を確認してからすぐに再配達を依頼する」など、そもそも再配達を前提にECなどを利用している人もいるだろう。しかし、そのたびに荷物を運んでいるのは人間だ。

ヤマト運輸の集配所
ヤマト運輸の集配所

荷物の「受け取り方」を変える

 ヤマト運輸では、こうした再配達によるドライバーの負荷を、テクノロジによって軽減しようとしている。最も代表的なものが、2016年1月から提供しているLINEアカウントを通じた再配達依頼。ヤマト運輸のLINE公式アカウントとクロネコIDを連携させることで、LINEのメッセージで荷物の届け予定や不在連絡を受け取れる。すでに多くの利用者を獲得しており、友だち数は3月29日時点で693万人におよぶ。

ヤマト運輸の公式LINEアカウント
ヤマト運輸の公式LINEアカウント

 同アカウントには、質問に自動返答する「チャットボット」によって再配達依頼や受取日時の変更ができる会話AI機能も実装されている。画面下の「再配達依頼」のボタンをタップして送り状番号を入力し、候補の日付(「今日」「明日」「それ以降」)や時間帯(「午前中」「14~16時」など)のボタンをタップしていくだけで、1分ほどで再配達依頼が完了するというものだ。

 電話での再配達依頼に抵抗があったり、わざわざウェブサイトや専用アプリから依頼することに煩わしさを感じたりしている人も多いだろう。慣れ親しんだコミュニケーションツールであるLINEで、友人にメッセージを送る感覚で気軽に再配達依頼ができるユーザーインターフェースは利用者からも好評だと、同社の営業推進部 係長である荒川菜津美氏は話す。「従来のメールと比べて、再配達の通知に気づいていただける人が増えた」(同氏)。

 ユーザーにより親しみを持ってもらうために、同アカウントに対してヤマト運輸の公式LINEスタンプ(現在は配信終了)を送ると、そのスタンプの内容に合わせたメッセージを自動返答してくれる機能も備えている。また3月からは、同アカウントに対して語尾に「にゃ」を付けてメッセージを送ると、“ネコ語”で返事をくれる機能もひっそりと実装されているので、ぜひ試してみてほしい。

 同じく再配達を減らす取り組みとして、2016年8月から、受け取りやすい時間帯を曜日ごとに登録できる「Myカレンダーサービス」を、クロネコメンバーズ会員向けに提供している。生活スタイルやパターンに合わせて受け取りやすい日時を事前に登録することで、その時間帯に優先的に届けてくれるサービスだ。都合が変わった際には、受信したメールから日時や場所を変更できる。

「Myカレンダーサービス」
「Myカレンダーサービス」

 LINEの公式アカウントが月に数回利用する“ライトユーザー”向けのサービスだとしたら、Myカレンダーは週に数回荷物を受け取る“ヘビーユーザー”向けのサービスだ。具体的な数は明かさなかったが、こちらもユーザー数は増加傾向にあるという。「通知手段が増えれば、その分通知に気づいてもらえる機会が増える。今後はFacebookやTwitterなど、より多くのSNSとの連携も検討したい」(荒川氏)。

荷物の「届け方」も変える

 ここまでは、荷物の“受け取り方”を変える施策だが、同社では荷物の“届け方”も変えようとしている。

 まずは、物流の情報基幹システム「NEKOシステム」の刷新だ。同社では現在、ドライバーが持ち歩いている配送用端末の次世代機を開発中だという。従来は、ドライバーが自身の経験や蓄積したノウハウによって1日の配送ルートを決めていたが、次世代機ではドライバーがその日の荷物をスキャンするだけで、最適な配送ルートを提示してもらえるようになるという。これにより、「新人ドライバーでもベテランと同じように効率よく集配できるようになる」(畠山氏)。

駅に設置された宅配ロッカー「PUDO(プドー)」
駅に設置された宅配ロッカー「PUDO(プドー)」

 また、荷物を届ける“場所”も変えていく。ヤマト運輸では、フランスのネオポストシッピングと合弁会社Packcity Japanを設立し、2016年5月から駅、スーパー、駐車場などでオープン型宅配ロッカー「PUDO(プドー)」の設置を開始した。2017年度に1000台、2022年度に5000台の設置を見込んでいる。

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