2月21~22日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2017 ビジネスに必須となるA.Iの可能性」では、企業における先進的な人工知能(AI)活用事例を紹介し、今後のビジネスでAIが必要不可欠になるかを解説する多彩な講演が催された。
今回は、楽天の執行役員で楽天技術研究所代表を務める森正弥氏による講演「『専門家』が負ける時代をどう生きるか--楽天のAI技術活用を例に」の概要を取り上げる。同氏は、ECで活用されつつあるAIについて同社の具体的事例を使って解説し、「専門家が負ける」現象の意味や、人間とAIが今後どうかかわっていくかなどについて話した。
楽天で戦略的な研究を担当する楽天技術研究所の活動方針は、ロードマップを提示しないこと。研究者の取り組みたい事柄、関心にもとづく最先端の研究を推進し、成果を同社のビジネスにいかす方策を探求してきた。これまでロングテール、クラウド、ビッグデータといった分野を研究し、昨今はAIに力を入れている。
研究成果の具体的な応用例としては、ドローンによる消費者向け配送サービス「そら楽」における、画像認識技術を活用した自動着陸機能がある。
さらに、フリーマーケットアプリ「ラクマ」で提供している、出品用の画像から商品カテゴリを自動判別して提案する機能「もしコレ!」も、楽天技術研究所の開発した深層学習ベースのシステムで実用化された。
森氏は、AIをラクマなどへ応用する過程で、興味深い結果が得られたと話す。それは、深層学習システムに与える学習用データなどをきれいに整形すると解析精度が下がってしまい、生データをそのまま処理させた方が高精度になる現象だ。コンピュータ解析にデータ整形が必須と考えられていた常識は覆され、「違う時代が来ている」との衝撃を受けたという。
常識に反するもう1つの事例として、ある世界的なハイテク企業が自社エンジニアに深層学習のトレーニングを実施した例を紹介した。この企業は、具体的な成果が出ることを期待していたのだが、エンジニアたちAIをまったく活用できず、試みは失敗したそうだ。
森氏は失敗の理由を、従来のエンジニアはシステムをビルディングブロックで考え、ブロックを組み上げて構築していくが、このアプローチだとAIをいかせないから、と分析する。物事をブロックで考えず、機械学習や深層学習の特性を前提にAIをいきなり適用する「AIネイティブ」という発想が必要だとした。
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