CNET Japan Live 2017

ナビタイムが考える「移動」におけるAIの可能性--UIはアプリからチャットへ

 2月21、22日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2017 ビジネスに必須となるA.Iの可能性」では、企業における先進的な人工知能(AI)の活用事例や、今後のビジネスでAIが必要不可欠になることを解説する多くの講演があった。

 地図・ナビゲーションサービスを提供するナビタイムジャパンが「botによるナビゲーションサービスの進化」と題して講演。リリースしたばかりの新しい旅行向けアプリと、LINEのボットに使われているAIを紹介するとともに、それによる新しいナビゲーションのあり方を提案した。

「多言語化しても、“ラフテー”を検索できる外国人は少ない」

毛塚大輔氏
株式会社ナビタイムジャパン メディア事業部 部長 毛塚大輔氏

 3、4年前からAI分野の研究開発に取り組んでいると話したナビタイムジャパン メディア事業部 部長の毛塚大輔氏。同社の主力アプリの1つであるスマートフォン用カーナビアプリ「カーナビタイム」では、既にボイスコントロール機能にAIを採用していると明かした。「駐車場検索」など簡単な単語を発話することで、その指示に沿ったスポットを検索し、音声でガイドしてくれるというものだ。

 ボイスコントロールによる操作をできるようにしたのは、「クルマの運転中に画面操作できない」というのが大きな理由だが、これに限らず、従来型のアプリUIではユーザーが本当に求めているものを実現しにくいケースが往々にしてあるという。

ボイスコントロール機能
「カーナビタイム」のボイスコントロール機能にAIが採用されている

 例えば同社が提供している別の乗換案内アプリでは、単純に出発地と目的地を指定して経路検索するだけなら簡単だ。ところが、お金がかかっても早く行ける経路、時間がかかっても安い経路など、シーンやユーザーによって求めるものが異なり、それを達成するにはユーザーが手で細かい設定を行うしかない。「その全てを使いこなせる人は少ないだろう、という課題があった」と同氏は打ち明ける。

全てを使いこなすには高いリテラシーが必要だろう
乗換案内アプリのアプリUI。細かい設定項目が多く、全てを使いこなすには高いリテラシーが必要だろう

 そこで採用したのが「チャットUI」だった。「検索条件を正確に入力するのではなく、対話形式とすることで面倒なところが省けるのではないか」と考えたという。実際にチャットUIは、2016年9月にリリースしたLINE向けの乗換案内サービスとして実装された。例えば「名古屋から新大阪の終電は?」と入力することで、ボットが最適な終電検索の結果を返す仕組みとなっている。

LINE向け乗換案内サービスのチャットUI
LINE向け乗換案内サービスのチャットUI

 また、同じくチャットUIを採用するアプリとして、当イベントが開催された2月21日当日にリリースした観光ガイドアプリ「鎌倉 NAVITIME Travel」を紹介した。他にも北海道、京都、沖縄版のアプリをリリース済みだが、この3つは日本語版しかないにもかかわらず、ダウンロードの約半数が外国のユーザーだったことから、鎌倉版ではインバウンド対応を意識し多言語化している。

「鎌倉 NAVITIME Travel」
2月21日にリリースした「鎌倉 NAVITIME Travel」

 とはいえ、多言語化したところで、例えば沖縄を観光中のおいしいものを食べたいと思っている外国人が、直接「“ラフテー”を検索できる人は少ないだろう」と同氏は考えた。「多言語化だけでは、本当に外国人が行きたいスポットを見つけられるのか疑問」という思いで、鎌倉版ではチャットUIを採用したという。

あいまいな表現で検索
食べたいものを知らなくても、あいまいな表現で検索できる

 この鎌倉版では、チャットUIにAIを組み合わせた3つの機能をもつ。

 1つは、あいまいな表現に対応した検索機能で、「お腹がすいた」と入力するだけで食事処を提案してくれるもの。もう1つは、指定したスポットにブックマークのようにメモを書いておける「スポットメモ」機能で、そのメモした場所に近づいた時に、通知やボットからお知らせが届くもの。最後の1つは、観光スポットに関する記事の一覧画面で流し読みしているのを検知し、「記事が見つかりませんか? 行きたい場所からも関連する記事を見つけることができます」というボットからのヒントメッセージを画面下に表示する機能だ。

「おなかがすいたのですが」だけで、おいしそうなお店を提案してくれる
「おなかがすいたのですが」だけで、おいしそうなお店を提案してくれる
「スポットメモ」に近づくと通知
メモを残していた「スポットメモ」に近づくと通知。お土産の買い忘れも防げるだろう
ボットがヒントメッセージを出してくれる
記事の一覧で流し読みしていると、ボットがヒントメッセージを出してくれる

 ただし、同社では、これらのAIを進んだ技術として取り入れるためにわざわざ使っているのではない。あくまでも「移動に関する課題があって、それを解決する手段としてAIを活用する、というアプローチをとっている。AIを使わなければならないのではない」と同氏は強調する。

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