ソニーと東京大学は3月13日、新たな学問領域となる「ヒューマンオーグメンテーション(人間拡張)学」を東京大学大学院情報学環において、4月より推進していくことで合意したと発表した。次世代を牽引する技術系人材の育成と強化を目的に、ソニーから東京大学への寄付講座として、4月から2020年3月31日までの3年間、実施する。
寄付講座名称は、和名「ヒューマンオーグメンテーション学(ソニー寄付講座)」、英名「Human Augmentation (endowed chair by Sony)」。東京大学大学院情報学環 特任准教授(4月1日付)の味八木崇(みやき・たかし)氏が担当する。
ヒューマンオーグメンテーション(Human Augmentation)とは、東京大学大学院情報学環教授でソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の副所長でもある暦本純一氏が提唱するコンセプト。人間とテクノロジ、人工知能(AI)を一体化することで、能力を強化しあうというもの。古くは、顕微鏡の発明が人間の視覚の拡張に結びついたように、身体、知覚、存在、認知の分野においても、人間の能力を拡張、発展することを目的にしている。
拡張する能力の範囲は、知覚、認知、身体、存在感の4つ。例えば、AR、VRといった技術を使い、運動をしている選手の視点に立つことで、選手でしか見られない光景を見ることができたり、身体の動きをデジタル化することで、バスケットゴールのシュートの動作を解析したりできるという。
存在の拡張においては、深度センサや360度カメラにより、遠方の場所をリアルタイムにキャプチャして3Dで再構成することで、「テレポーテーション(遠隔三次元空間接続)」したり、テレプレゼンスロボットを使用することで、遠隔地の体験を共有できたりするという。
「コンセプトはウィリアム・ギブスンのSF小説『NEUROMANCER』に登場した『Jack in』。ほかの人の体験を共有するためにその人になりきる=接続するというもの」と味八木氏は、その内容を説明する。
ソニー執行役コーポレートエグゼクティブの北野宏明氏は「今回の連携によって新技術ができれば、もちろん製品に取り入れていきたいが、それだけではなく、もっと大きな視点で広く国内外に貢献できる人材育成をしていきたい」と目的を話す。
ヒューマンオーグメンテーションは、人間とテクノロジー・AIが一体化し、時間や空間の制約を超えて相互に能力を強化しあう、IoA(Internet of Abilities:能力のインターネット)という未来社会基盤の構築を視野に入れた、最先端の研究を体系化していく学問領域だという。
東京大学大学院情報学環・学際情報学府は、情報学分野の総合的で高度な研究と教育を先端的かつダイナミックに推進する組織で、知の構造化に積極的に参画し、知の公共性を担保していくことを使命としているとのこと。これは、新技術を通じて人類、社会への貢献を使命とするソニー(ソニーCSL)と目指す未来像がつながることから、今回の連携につながったとしている
AIやロボティクス・IoTなどが進展するなか、ヒューマンオーグメンテーション学という新たな学問領域を開拓していくことを通じて、産業界と教育界を活性化させ、未来を創る人材の育成と強化につなげていくことを狙いとしているという。
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