次世代型のオンライン証券サービスを今春にも開始する予定で、現在開発の大詰めを迎えているFOLIOは2月1日、第三者割当増資を実施して総額18億円の資金を調達したと発表した。シードラウンドを含めた累計調達額は21億円となる。引受先は既存株主であるDCM Ventures、Draper Nexusの2社に加え、今回新たにジャフコ、マネックスベンチャーズ、三井住友海上キャピタル、Rakuten FinTech Fundが加わった。
FOLIOは「資産運用をバリアフリーに」をスローガンに掲げ、誰もが簡単に投資を楽しめるプラットフォームを構築中だ。今回調達した資金は、広告やプロモーション、人材採用に充てる。
ユーザー(投資家)から見たFOLIOの投資スタイル(商品)は大きく2つに分かれる。1つは「テーマ投資」だ。個別企業・銘柄を選択して投資するのではなく、イメージとしては「IoT」や「ロボット」、「東京オリンピック」など、その時どきのトピックがあらかじめテーマとして設定されており、そのテーマに対して投資する。各テーマはFOLIO独自のアルゴリズムによって選出された関連企業株10銘柄で構成されているので、その10社にまとめて投資する形となる。さらに、テーマを構成する10銘柄の投資比率は、金融工学を応用した「最適分散」される。そのため、たとえば「いま人工知能がはやっているようだから、どの企業に投資するべきか自分で調べてみよう」というような個人の手間などが省け、初心者でもわかりやすく投資を考えられるだろう。
また、個別株に投資する際には最低売買単位が決められていることもあり、普通は10社に投資するとなると相当な金額が必要になる。しかし、FOLIOでは「単元未満株制度」を活用し、ひとつのテーマに対しておよそ10万円から投資ができるため、これまでの投資に比べてリスクが低減される可能性も高い。このほか、売買に適したタイミングや保有銘柄比率の再調整(リバランス)の機会を通知する機能もある。
もう1つの投資スタイルは、ロボアドバイザー機能と連携した「全自動分散投資」だ。これも金融工学などを応用したアルゴリズムを用い、投資銘柄のリバランスや売買の最適なタイミングを計りつつ、自動で資産運用してくれる。投資金額を設定しておけば、資産運用をすべて任せられるのだ。つまり、能動的に投資するならばテーマ投資を、受動的に投資するならばロボアドバイザーによる自動投資を、というわけだ。
創業者で代表取締役社長の甲斐真一郎氏は、「とにかく実現したいことは、“資産運用や投資”というものを経済圏から生活圏に移したいのです」と語る。資産運用が一般の消費者にとって身近ではなく、難しく手間がかかるうえにリスクも高いというような「さまざまなペイポイント(苦痛を感じるポイント)をすべて解決し、1000兆円にのぼる日本の預貯金をできる限り、流動化させて企業活性のためにつかえるようなプラットフォームにしていきたい」と口調を強めた。
さらに甲斐氏は、「FOLIOは金融の企業ではなく、未来永劫テクノロジを重視する企業です。それを貫いて行きます。たとえば部署の名前は一般的な“ソリューション部”や“IT事業部”というような名前を付けず、“フィナンシャルテクノロジ部”という部署名を付けています。これは、マーケットサイエンス、つまり機械学習や言語解析、金融工学といったサイエンスの面と、伝統的な金融の基幹システムを両方とも見られるエンジニアたちに集まってほしいという思いを込めています。この部署では、バックエンドをはじめとするインフラを構築しつつ、金融工学の運用ロジックや機械学習の基盤なども構築しています。通常の金融機関とはまったく違うと思います」とユニークさをアピールした。
ユニークな人材という意味では、甲斐氏自身がプロボクサーを経て金融業界入りした珍しい経歴だ。起業ストーリーや他のメンバーの経歴などは、以前の記事「FinTech新参者のFOLIOが変革したい日本人の資産運用スタイル--今秋サービス開始を目指す」を参照してほしい。FOLIOは、2015年12月10日の起業からおよそ1年半でサービスインの予定だ。
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