訪日客のレンタカー利用が増える中、課題も出てきています。例えば、外国人ドライバーによる事故の増加です。不慣れな車やハンドル、道路や標識など事故につながりやすい要因などから事故率は日本人よりも数倍高いと言われており、実際に事故の発生件数が問題化しつつあるのが現状です。
外国人ドライバーの事故発生を受け、業界団体でも対策を始めています。
全国レンタカー協会では、訪日客向けに道路標識の案内やETCの通過方法など、日本独自の交通事情を解説した利用ガイドを作成し、全国の加盟会社各店舗で配布しています。店舗では、駐車場の止め方や油種の違いなどを盛り込んだ説明書を用意したり、多言語対応のスタッフを一部店舗で配置するなどの対策を講じています。
さらに民間だけでなく、国も対策に動き出しています。警察庁は一時停止の標識見直しの検討を開始したほか、国土交通省でも、道路案内標識の表記を変更するなど取り組みを進めているようです。
官民両者で現状に合わせた対策を実施しているように見えますが、これで外国人の事故発生件数は減っていくのでしょうか。
前述した通り、日本でのレンタカー利用が急増しているという台湾、香港両国において、今度は「日本 交通標識(日本の交通標識)」の検索数を調査しました。
結果はいずれの国においても検索数としては少なく、ここ数年においても大きな変化は見られていません。あくまでも推測ですが、日本でのレンタカー利用上位国である台湾や香港の方でさえ、日本の道路標識をさほど気にしていないのが現状ではないでしょうか。
日本人の感覚からすると、海外でレンタカーを借りるとなれば事前にある程度はその国の道路交通ルールや標識などを慎重に調べて備えるといった検索行動をとると想定されますが、同じアジア、大きな違いがあるとは思っていないのかもしれません。
また、首都高速道路など日本特有の複雑で入り組んだ道路事情がある中、事前に標識などを調査した所でその場で対応できるかと言えば、それはそれで難しいことでしょう。
もちろん、そういった特殊事情に備え日本の道路事情や特徴、ルール、運転習慣などを渡航移動中にガイドにまとめて配布するといった地道な啓蒙活動は、防災対策としてある意味必要だと考えています。
一方で、外国人利用者の増加と国民性の違いを理解した上で、ある程度の事故発生は避けられないと考えて「減災対策」を先に講じておく事も、観光立国日本を目指していく上では必要な一手ではないでしょうか。
例えば、予期せず事故に遭った際に、国籍ごとに対応できる専門家への連絡手段や連絡先の認知活動をはじめ、外国語に対応できるロードサービス事業者の体制整備といった対策です。すでに、JAFでは多言語対応のロードサービスを開始していますが、課題はむしろ、そのサービス内容が訪日客に認知されているか、または緊急時に訪日客自身が呼べるよう対策が打たれているかだと感じます。
道路標識の記載方法を変更するといった”十羽一絡げ”的な対策も必要ではありますが、検索数データからも分かるように国により考え方はさまざまです。国籍ごとの事故発生経緯や原因を究明し、それぞれ最適な対策や事故発生後の対応策が必要となります。
筆者は自身の海外駐在経験を経た持論として、海外においては日本人では通常予測し得ない突発的な事象発生は避けられないことを痛感しました。「防災」よりも「減災」に重きをおいた考え方が、グローバル社会において生き抜くためのは必要であると身をもって感じたのです。
訪日観光客4000万人もの受け入れを目指す日本自身もグローバル化し、名実ともに訪日旅行者に近づいていくことが目標達成の何よりの近道であると考えます。
アウンコンサルティング株式会社
1998年創業、2005年11月東証マザーズ上場。翻訳ノウハウを生かし、業界ではいち早く海外展開を推し進めてきた多言語ウェブプロモーションのパイオニア企業。主にウェブプロモーションサービスの中でもSEO・SEMを得意としている。アジア8拠点(東京、沖縄、台湾、香港、フィリピン、タイ、シンガポール、韓国)に展開し、2000社を超える実績を持つ。各国の現地ネットワークを生かし、インターネット経由での各国・各業種別のインバウンドプロモーションを提案している。
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