誰かに言いたい、話を聞いてもらいたい時、皆さんなら誰に言うだろうか。大人世代は、家族や友人に話を聞いてもらうという人が多いのではないか。一方、中高生は必ずしもそうではないようだ。
中高生はTwitter内でつながりを広げたい子が多いので、「中2/大阪/◯◯中/バスケ部/セカオワ/AAA/黒バス…」などと、好きなものや所属をひたすら書いていることが多い。同じ趣味や所属などでフォローしたりされたりして交流を広げることを目的としているのだ。
一方、Twitterでフォロワーがほとんどいないアカウントを見たことがあるだろう。「すみっこ」「ひとりごと」などのアカウント名で、プロフィール説明にはほとんど何も書かれていないものが多い。フォロワーを獲得したいのではなく、交流したいわけでもない。ただつぶやきたいユーザーたちがいる。
こういうものの多くは、中高生などの若いユーザーのサブ垢(アカウント)、つまり「捨て垢」だ。捨て垢とは通常のアカウントでは書き込みづらいことを書き込んだり、接触しづらい相手と接触したりするために作られる別のアカウントを意味する。なお、垢消しとはアカウントを削除することだが、大抵の場合は人間関係を一新するために削除することが多く、すぐに新しいアカウントで復活することが多いようだ。
中高生のTwitterにおける複数アカウント使い分けの最新状況と問題点について解説していきたい。
中高生の多くがTwitterで複数アカウントを使い分けていることは、過去に当連載でご紹介している。中高生は、クラスの友だちなどリアルの人間関係に公開する「表アカウント」、限られた友人のみに公開する「裏アカウント」、趣味のことをツイートする「趣味アカウント」、愚痴やネガティブなことだけをツイートする「裏アカウント(闇アカウント)」など、複数の“捨て垢”を所持している。アカウントが一つしかない子は少数派で、多くの子が日常的に複数のアカウントを使い分けているのだ。中には以前ご紹介したように、勉強専用アカウント(勉強垢)を所持している子もいる。
繰り返しになるが、中高生はクラス内で居場所を獲得するためにキャラを演じる場合が多い。「本当はオタクキャラなのに、派手顔とファッションのせいで一軍に入れたられた」「クラス内にツッコミがいなかったからツッコミキャラになるしかなかった」などの理由で、自分に合わないキャラにならざるをえない子も少なくない。一度定着してしまったキャラを変えるいわゆる“キャラ変”が難しいことは多くの子たちの悩みだ。
「キャラに合わないことは表アカウントではツイートできない」という中高生は多い。「クラスの友だちにオタクツイートなどをして浮きたくない」「でも趣味のことは情報も集めたいし思い切りツイートしたい」「本当の自分を出せる場がほしい」「友だちには言えないけれど言わずにはいられない」――。そのようなニーズをすべて満たすのがアカウント使い分けなのだ。
一般的に男子生徒よりも女子生徒の方がアカウント数が多く、アカウントを削除して再度登録してやり直す(垢消し)例も多くなっている。以前ご紹介したとおり、恋人や親友と共同でカップル垢や共同垢を運用している子たちもいるが、そのようなアカウントも多くは長続きしない。
「Twitterは匿名なのになぜ複数アカウントが必要なのか?」と思う大人世代もいるだろう。しかし大人世代も、友だちが増えすぎてしまい、Facebookが使いづらいと感じている人はいるはずだ。実名制のため、上司や同僚を含む仕事相手、家族、恋人、友人などとつながってしまい、何も書けなくなっている人は多いだろう。
実は、双方の根っこは近いのではないか。中高生ではTwitterはメインのコミュニケーションツールの一つなので、大抵の場合、匿名でも表アカウントは周囲に把握されてしまっている。中高生にとっては、匿名Twitterでも実名アカウントと同じ状態なのだ。そこで、複数のアカウントを所持して使い分けているということになる。
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