最近は、複数アカウント所持がさらに徹底している。たとえば、興味関心ごとにTwitterやInstagramのアカウントを複数所持して使い分ける例は一般的になりつつある。音楽の情報を得たいときには音楽用アカウント、ファッションの情報を得たいときはファッション用アカウントのタイムラインを眺めるというわけだ。
それだけでなく、冒頭でご紹介したように誰にも伝えない、ただ言いたいだけのツイートを投稿するためのアカウントが中高生に増えているようだ。この系統のアカウントには、あれほど強いはずのつながりたい欲求はまったく見られない。意外と多いのは、誰かへの思い、葛藤、本音の吐露だ。まるで日記のように思いを吐き出しているアカウントが非常に多いのだ。投稿からは、あれこれ悩んだり、将来について真剣に考えていることが伝わってくる。
日記で書くだけでもいいのに、それでも彼女たちはTwitterにさまざまな秘密を吐き出す。つながりたくないならSNSでなくてもいいのにあえてSNSなのは、つながりたい、けれどつながりたくない彼女たちの複雑な心情を表しているのかもしれない。Twitterは表現の場や交流の場であると同時に、彼女たちの心の拠り所にもなっているのだ。
話を聞くと、数人で鍵をかけてTwitterの共同アカウントを運用し、LINEグループのような使い方をしている子たちもいた。「Twitterだと通知がいかないから気が楽。わざわざ通知するほどのことじゃないけど言いたいことを投稿している」という。
「診断メーカーとかすると怒る人がいるから…」という理由で、診断メーカー専用のアカウントを持っている子もいた。中には、「イライラ解消でとりあえず叫びたくて、攻撃専用アカウントを作った」という極端な子もいた。高校生の所持アカウント数は、ますます増加傾向にあるようだ。
子どもたちは、相手への過剰な気遣いとペルソナの切り替えのために複数アカウントを運用している。処世術として有効なのだろうが、過剰にいきすぎると疲れてしまうし、本当にそこまでする必要があるのだろうか。Twitterで、「複数垢を使い分けてる子が多いけど、私はいろいろな面を見せてほしい。自分が知らないことも教えてくれるアカウントの方がいいよ」と書いている高校生もいたことを付け加えておきたい。
学生時代は人間関係を築く練習をする時期だ。人間にはさまざまな面があり、どんな面でも出せる関係性を築くのが最終的な目標だ。保護者は、子どもたちがリアルの人間関係が築けるよう見守ってあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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