さて。そんな大変な状況にあるサウジを現在実質的に舵取りしているのが、国王King Salmanの息子であるMohammed副皇太子(Deputy Crown Prince Mohammed bin Salman)という人物。プリンスの前にdeputy(「代理」もしくは「副」)が付いているのは、従兄弟の皇太子(Crown Prince Mohammed bin Naye)が継承権1位でいるからだろうか。NYTimes記事に出ている家系図では、国王が1935年生まれ、皇太子が1959年生まれ、そして副皇太子が1985年生まれとなっている。
この副皇太子はまだ30歳そこそことかなり若いが、高齢の国王から軍事・外交と経済の両方を任されているそうで、経済分野については国の経済開発評議会(Council for Economic and Development Affairs)議長を務めるほか、後述する国営石油会社サウジアラムコの意思決定機関(最高会議)の議長も勤めているそうだ。そんな人物が「9月に来日した際に、孫社長と会談」(上記NHK記事)というのだから、巨額の投資話がすぐにまとまったのもさほど不思議なことではないかもしれない。
またこのNHK記事(前者)には、「ムハンマド副皇太子(“MBS”)は6月、アメリカを公式訪問し、オバマ大統領と会談(略)このとき、“BMS”はシリコンバレーなども訪れ、FacebookやGoogleなど名だたるIT企業の経営者と会談しました。IT投資に長けたパートナーを探す副皇太子に、経営者たちは、こぞって 孫正義社長の名前を挙げたと言われています」と、孫社長に(資金運用を任せる相手として)白羽の矢が立った理由について簡単に触れた部分もある。
この「会談」の部分が気になってウェブを検索してみると、実際に副皇太子がシリコンバレーを代表するベンチャー投資家連中と並んで写っている記念写真の載った記事も見つかる。この写真(7月半ばに出ていたWSJ記事中のもの)のなかには、Michael Moritz(Sequoia)、John Doerr(Kleiner Perkins)という大御所二人をはじめとして、Marc Andreessen(Andreessen Horowitz)、Reid Hoffman(Greylock)、Sam Altman(Y Combinator)、それにDonal Trumpを支持して良くも悪くもへそ曲がりぶりを知らしめたPeter Thiel(Founders Fund)などが顔を揃えていて実に興味深いが、サウジが運用を想定している金額が大きすぎて、この会合に参加したオールスター級のベンチャー投資家を持ってしてもさすがに手に負えないとなったのかもしれない。
2016年6月はじめにUber(ライドシェアリング・サービス最大手)への35億ドル出資を決めていたサウジ政府(の投資ファンドPublic Investment Fund)だが、別のWSJ記事によると、Mohammed副皇太子はベンチャー投資家との会合の際、実はUber以外の案件にも投資する用意があると示唆していたらしい。しかし、その後に起こった米国内の政治的な動きなどから、米国への直接投資に伴うリスクを懸念して、代わりにソフトバンクに資金の運用を任せる(1000億ドルファンド経由の間接投資とする)ことにしたらしい。また、現在東京証券取引所が躍起になっているというサウジアラムコの上場誘致など、このソフトバンクのファンドとそこに流れ込むと思われる資金をめぐる話題が今年は多くなりそうにも思える。
なお、サウジアラムコの株式公開(2018年のメド)については、まだ全体の計画は固まっていないようだが、一部ではすでに「株式の5%程度を売却して1000億~1500億ドル程度を調達」(WSJ)「上場実現時の同社の時価総額は230兆円」(NHK)といった話も見かける。NHK記事(後者)には「世界最大のAppleのおよそ70兆円を3倍以上も上回る巨大企業の誕生」ともあるが、米国を代表する大手IT企業5社(Apple、Google、Microsoft、Amazon、Facebook)の合計がだいたい280兆円(2兆4222億7000万ドル×116.13円で計算。1月11日時点)なので、それと比較してもいかに大きな規模の企業になりそうかがわかるだろう。
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