アプリストアでアルツハイマー病を検索すると上位に表示されるMindMateも、同様の方針をとった。「世界トップクラスのアルツハイマー病プラットフォーム」を自称するMindMateは、同社のインタラクティブな脳トレゲームは「世界の最先端の研究成果に基づいて、ユーザーの認知能力を高める」としていた。しかし、リサーチコンサルタントらが懸念を提起したことを受けて、同社はマーケティング資料を変更するようになった。
MindMateの共同創設者兼マネージングディレクターであるPatrick Renner氏は、「われわれは病気の進行を遅らせると主張しているわけではない」と話す。正確に言えば、今はもう、そういう主張はしていない。
MindMateのアプリには、記憶ゲームだけでなく、ユーザーが「肉体的、精神的に健康な状態を維持」できるように支援する、栄養と運動に関するアドバイスや、1940年代~1980年代のヒット作品を視聴できる音楽とテレビのセクションも含まれる。スコットランドに拠点を置くMindMateは2016年3月、支援グループや家族の介護者、介護施設による同社アプリの使用に関して、グラスゴー地域の国民保健サービス(NHS)との契約を勝ち取った。約1万5000人が少なくとも月に1回は同アプリを使用していると同社は述べている。
10年間にわたる研究で使用されたスピードトレーニングゲームが2016年、さまざまなメディアで取り上げられた。このゲームによって、認知症のリスクを半分に減らせることを示すデータを米アルツハイマー病協会が紹介したからだ。
「ACTIVE」(Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly:高齢者向け先進的認知力トレーニング)と呼ばれるこの研究では、65歳~94歳の健康な高齢者2832人に対し、コンピュータ画面の中心と端に表示される物体を同時に識別してもらった。答えが正しければ、より多くの物体がより速いペースで表示されるようになることから、このゲームはスピードトレーニングと呼ばれる。
ゲームの内容を具体的に説明しよう。何頭かの牛が牧草地にいる。2台の車が牧草地の中心にあり、道路標識が周囲に散在している。ここで、頭や目を動かさずに、2台の車の1台(クーペではなくコンバーチブル)と「Route 66」の標識を識別するよう求められる。ゲームが進むにつれて、気を散らすものが増えていくが、正解を見分ける時間は少なくなる。
Posit ScienceのCEOを務めるHenry Mahncke氏は、「これは基本的に新種の薬のようなもの」と話す。2008年、同社はACTIVEの研究で使われたこの脳トレゲームを買収した。Posit Scienceは現在、自社の「BrainHQ」オンラインサービスの一部として、そのゲームのアップデートバージョンである「Double Decision」を提供している。
Mahncke氏は、このようなアプリには脳の回路を再接続する力があると強く信じており、これから5年以内に、医師がDouble Decisionのようなアプリの処方箋を書くようになると考えている。同氏は近いうちに米食品医薬品局(FDA)の承認を申請する予定だ。医師は「低コストの治療介入を求めている」と同氏は言う。当局の承認を得られれば、これらのアプリはまさにそれを提供できるようになる。
しかし、医師は患者に対して、アプリの使用以外のこともやるように指示するだろう。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の助教であるJoaquin A. Anguera氏によると、アルツハイマー病の治療には、結局のところ運動と医療、そしてアプリを組み合わせた「カクテル効果」が必要になるという。「それぞれの要素が少しずつ必要だ」(Anguera氏)
母があれほど若くして病にかかった理由は、誰にも分からない。詳細な記録は残っていない上、時間とともにいろいろなことが曖昧になっているため、私の家系でアルツハイマー病や認知症がどれほど昔まで遡るのかを知るのは困難だ。父方の祖母がアルツハイマー病患者だったことは分かっている。父親にアルツハイマー病の症状は現れていない。兄も同様だ。
その一方で、私は自分の幼い息子を見ながら、母が経験したことが起きないように自分に今できることはないか考えている。
現在のところ、治療法は存在しない。だが、将来それが見つかることを期待している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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