1年前の決算書を分析するよりも、今月の売上を見て判断したほうがよっぽど確実ですよね。売上を伸ばしている成長企業であれば、過去にとらわれずどんどんお金を貸すことができるわけです。それが日本の中小企業を元気にすることに繋がるのではないかと思います。
売上を生み出すということは、企業にとってはコストが先に出ていくことを意味しています。材料を買ったり、人材を雇用したりするのは、売掛金が実際に入金される前のことです。実は売上を伸ばすというのは、企業によっては資金繰りが厳しくなるケースがあります。そうした企業の成長フェーズで資金がしっかり供給できるかが大きな課題です。日本経済が停滞している要因の1つがここにあるのではないかとも思っています。日本の企業の大部分は中小企業であり、その中小企業には成長のために必要な資金が十分に回っていない。そのため日本経済全体の成長も止まってしまっているのです。
そうですね。実際に起業すればわかると思いますが、ビジネスを始めるための準備では、とにかくコストが出ていくだけの状態です。まず、それがなければ起業できない。次にそのビジネスを拡大するために拠点を増強したり人材を増やしたりしたいと考える。その時にもコストは先に出ていくのです。ビジネスは常に支出することからスタートしており、そのマイナスを補える資金がなければ成長させることはできないのです。本来であれば、それを補う役割を銀行などが担っているはずなのですが、中小企業向けには十分に機能していないのが現実です。
イノベーティブな製品やサービスを生み出そうとしている優秀なベンチャー企業は、VCや投資家から資金を調達することができるかもしれません。しかし、それができる中小企業は全体のごくごく一部に過ぎません。その他大多数の中小企業は、人目を引くようなものすごい競争力など持っていないのです。他の中小企業と同じようなものを作ったり、同じような商売をして頑張っていますよね。しかし、それが人々の生活を支えているわけであって、そこにお金が回らなければ経済はおかしなことになるのです。そうした“普通の中小企業”に過不足なく金融サービスが提供されることが重要なのです。
このサービスは2016年7月に開始したのですが、上場企業5社が導入を決定していて、1社はすでにシステムが稼働しています。検討企業は20社を超えており、2017年にはさらに導入企業が増えるのではないかと思います。中小企業との間で約束手形を用いた取引をしているすべての企業がこのサービスを導入できるので、市場ニーズのポテンシャルは大きいのではないかと思います。
想定される導入企業については、メーカー系企業など慣行として納品後の支払いサイトが長いビジネスでの活用を想定しています。導入にあたって大企業側にシステム改修などの手間はなく、中小企業に対する買掛データを送信してもらえば電子債権化を当社のシステムが行うことができます。また中小企業側には電子債権をメールかFAXで通知しますので、こちらもシステム導入などの手間はありません。
ちなみに、建築業やシステムベンダーなど発注から納品までの期間がそもそも非常に長いビジネスモデルで、中小企業が納品までに必要な運転資金を確保できる仕組みとして、発注段階で発注書を電子債権化してそれを担保として資金を調達できる「POファイナンス」というシステムも、現在金融庁や政府系関係機関、融資する資金を供給してもらう金融機関などと協議しながら準備しているところです。
そうですね。残念ながら中小企業は日本の経済システムの成長から置いていかれてしまっていると思います。金融スキームはこれまで大きく発展してきましたが、そのほとんどは大企業か機関投資家向けのもの。中小企業は蚊帳の外で、昭和の時代と同じスキームで苦労しているわけです。そこを電子記録債権というFinTechによって打開したいと思います。
繰り返しになりますが、いま中小企業に必要なのは成長資金であると思います。しかし、その成長資金は過去の決算書を分析しただけでは生み出せないものであり、中小企業の成長のためには企業のビジネスの“いま”を根拠に資金供給ができる金融スキームが求められると考えています。我々はFinTechを通じて、中小企業に“成長ファイナンス”を提供したい。多くの中小企業にとって、この成長ファイナンスを活用してもらいながら、ビジネスを拡大するためのチャンスを掴んでもらいたいと思います。
中小企業のビジネスを巡っては、競争力のあるイノベーティブな商品やサービスを作ったり、上場を目指している企業が大規模な資金調達を実現していることがニュースになっていますが、日本経済の大部分は、大企業のビジネスを支えている“普通の中小企業”によって支えられているということを忘れてはいけません。そうした普通の中小企業が成長するための金融スキームとして、この“成長ファイナンス”をこれからのスタンダードにしたいと思います。
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